トルシエ氏はベトナムで新たな挑戦を
日本代表のベスト16進出に沸いたワールドカップ・ロシア大会。試合前に、サッカー解説者や評論家のプレビューがあるのは珍しくもないし、かつて日本代表を指揮した指導者たちが展望を読み解くといったものも、よくある企画だ。
2002年の日韓大会で日本代表を率いたフィリップ・トルシエ氏がこの役目を務めたことにも、なんら不思議はないが、番組説明欄にあった表示を見て驚いた人も少なからずいたのではないだろうか。「ベトナムから生出演」「ベトナムの地から語った」・・・そう、かの“白い魔術師”は今、東南アジアのベトナムで新たな挑戦を始めようとしているのだ。
トルシエ氏を招聘したのは、ベトナムの不動産最大手ビングループ(VIN GROUP)が運営するベトナムサッカー選手才能開発投資ファンド(PROMOTION FUND VIETNAMESE FOOTBALL TALENTS、略称PVF)。ビングループは、ベトナム人なら知らぬ者はいない大財閥で、不動産、小売、病院、教育、飲食、娯楽、スポーツ、自動車、通信など、あらゆる分野で多角展開している。国内では、「ビンの病院で生まれ、学校に通い、食事し、遊び、そして病院で死ぬ」という言葉もあるほどで、いまや国民の生活には欠かせない存在となっている。
そんなビングループの出資で設立したPVFは昨年末、ホーチミン市から紅河デルタ地方フンイエン省に全面移転し、3000万ドル(約34億円)を投じて、アジア屈指の最先端アカデミーを建設した。開所式では、マンチェスター・ユナイテッドのレジェンドである、ライアン・ギグス氏のアカデミーダイレクター就任、ポール・スコールズ氏の補佐役就任が発表され、大変な話題となった。