森保氏への“クエスチョン”とは?
森保については僕も大好きだし、素晴らしい人物だ。ただ、クエスチョンがある。彼はサンフレッチェ(広島)で3度リーグ優勝もしているし、僕が言えた立場じゃないんだけど、サンフレッチェではそれまでに作られてきているものがすでにあった。自分で自分のスタイルを築き上げていく作業はこれからオリンピックの方でもやっていくと思う。彼がA代表の監督をやることに異論はないけど、経験不足が出てしまうんじゃないかなと。だから、大丈夫なのかというクエスチョンが僕にはあるんだ。
手倉森(誠)だったら、そのまま任せても大丈夫という雰囲気がある。手倉森の方がいい、とかではなくてね。森保のことを日本サッカー協会が育てたいんだったらいいかもしれないけど、いきなり森保に全部預けるというのは酷だし、ちょっとまだ足りないかなという感じはする。例えば僕だったら、長谷川健太だったら面白いかなと思ったりするよ。あとは僕と同期の反町(康治)だとか、井原(正巳)も。
僕は健太の頭の中を探りたいけどね。威厳があって、自分の中には確固たるサッカーがある。ああいうタイプも好きだね。清水(エスパルス)でJクラブの監督業をスタートさせて、ガンバ(大阪)でタイトルをたくさん獲って、今季からはFC東京を率いている。イチから積み上げるという点で健太は全部やってきているよね。色々なことを経験する過程が、森保にはまだ足りない。
長く面倒を見て、ちゃんと育てるという人物には森保は最適だと思う。言い方を変えれば、結果が出るまでに我慢が必要になる。試す時間が必要になるし、外国人監督みたいにいきなり結果を求めるわけにはいかない。森保自身も探り探りになると思う。ただ、ドイツのレーブみたいに8年とか、次のワールドカップまでの4年にこだわらない考えが協会にはあるのかもしれない。そういう人材として、田嶋(幸三)会長が森保のことを買っているんじゃないか。
▽語り手:宮澤ミシェル
1963年7月14日、千葉県出身。Jリーグ黎明期をプレーヤーとして戦い、94年には日本代表に選出された経験を持つ。現役引退後は解説者の道を歩み、日本が出場した過去5大会のワールドカップを現地で解説している。様々なメディアで活躍。出演番組にはNHK『Jリーグ中継』『Jリーグタイム』、WOWOW『スペインサッカー リーガ・エスパニョーラ』『リーガダイジェスト!』などがある。
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