指揮官も本田との交渉を暗に認める。今後の進展は?
メルボルン・ビクトリーには、元豪州代表のカール・ヴァレリ、現役ニュージーランド代表コスタ・バルバルセスなどがいるものの、いずれも実績、実力ともに本田には及ばない。このチームで、本田は確実に“王様”になれる。
そんなメルボルン・ビクトリーの指揮官は、元豪州代表DFのケビン・マスカット。現役時代は、とにかく熱く、時にはその熱さが空回りしてのラフプレーで有名だった選手が、今や豪州随一の熱血監督として、国内では現横浜F・マリノス監督のアンジ・ポスタコグルー、次期豪州代表監督のグラハム・アーノルドに続き、前述のポポヴィッチと並ぶ国内有数の指導者としての評価を得るに至った。熱い親分肌のマスカットと自己主張の強い本田の意思疎通さえ上手くいけば、そこにはとても大きくポジティブな力が産まれる気がするだけに、非常に楽しみだ。
クラブとしても、世界を知り、アジアで強烈なインパクトを発揮する「本田圭佑」を純粋な戦力として必要としている。もちろんマーケティング的側面での期待値もある。しかし、それ以上に純粋にチームの必要不可欠なピースとしてクラブが欲するのであれば、この移籍、本田サイドにとっても悪い選択肢とはなりようがない。
相変わらず、FFAは「決まっていない案件にはコメントしない」という姿勢を崩さないが、現地からは一歩踏み込んだ報道が聞こえてきた。24日、地元のラジオ局に出演したマスカット監督が本田との交渉について聞かれ、「現時点では、(本田側との交渉に関して)何をしていて、どういう状況にあるのかということなど、コメントできることは何もない」としたうえで、最後に“You can read between the lines.”と付け加えた。
これは文字通り「行間を読んでくれて構わない」ということなのだが、英語のニュアンスでは事実上の肯定と取られる表現。実際にこの発言を伝えるメディアの記事の見出しは“Kevin Muscat confirms Melbourne Victory interest in Keisuke Honda”(マスカット監督、本田獲得への興味を認める)となっている。ちなみに、この監督のコメントは、当事者であるメルボルン・ビクトリー関係者が公式に交渉の事実を認めた最初の発言でもある。これによってまた一歩、本田の豪州移籍が実現に近づいたのではないかという印象を持った。
日本での報道によれば、本田はワールドカップ前に「僕は『らしい』と思ってもらえる選択をしたい」と移籍について語り、先ごろのインタビューでは「(サッカーを続けるかどうかは)7月末までには結論を出したい」と語ったと聞く。
過去、三浦知良、小野伸二という日本サッカーのレジェンドもプレーをしてきた豪州Aリーグに「本田圭佑」という日本が産んだ類まれなカリスマの降臨は実現するか―彼が「らしい」結論を出すという7月も残すところ、あと1週間を切っている。そろそろ決まる…そう信じて待つしかない。
(文:植松久隆)
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