なぜ、メルボルン・ビクトリーが本田を欲するのか
一時期は有力候補ともされたが、結局はサガン鳥栖の後塵を拝する結果となった。その大きな失敗体験の後に、シドニーFCはより確実性の高い補強戦略にシフトしていると考えるのが妥当だろう。そうなれば、豪州で本田獲得に興味を持ち、実際に動いたのはメルボルン・ビクトリーのみと考えるのが自然だ。
そのメルボルン・ビクトリーの交渉でさえも、どこか他の国のクラブが本田サイドを翻意させるオファーを出せば、F・トーレス同様にあと一歩のところで破談となることも十分にあり得る。だからこそ、前回から「この手の話は、本当に決まらなければ…」と予防線を張ってきた。
そんな状況下で、本田が今、まさに交渉を進めているメルボルン・ビクトリーと言うチームの現状を紹介するのは、リスキーだということは分かっている。「まだ決まったわけではないじゃないか」との突っ込みも想定の範囲内だ。
それでも、「なぜ、ビクトリーが本田を欲するか」「なぜ、メルボルンが移籍先に相応しいのか」を、もう少し俯瞰しつつ理解して欲しいとの思いから今回の記事がある。もし、この移籍話がご破算になっても、次のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場が決まっている豪州のチャンピオンチームを知ってもらうという最低限の目的は達せられるので、それで良しとしたい。
Aリーグのオフシーズンは、毎年、選手の入れ替わりが活発だ。毎年のようにスクラップ・アンド・ビルドをして、所属選手の半数以上が入れ替えるクラブもざらにあり、今季からパース・グローリーの監督に就任したトニー・ポポヴィッチはその典型である。
そんなAリーグのオフシーズンの選手の動きが、今年は特に激しい。しかも、有力選手の国外流出が顕著だ。現地メディアは、“exodus”という、旧約聖書の「出エジプト」の故事にも使われる、「脱出」「大移動」を意味する仰々しい単語でこの選手の動きを伝えているくらいだ。