イニエスタがイニエスタであることは変わらない
ボールを保持し、コンビネーションでゴールに迫るのならイニエスタはうってつけの存在だ。そういうサッカーを目指しているからこそ、世界的名手の獲得に至ったのだろう。藤田直之や郷家友太など中盤の選手はイニエスタをサポートし、距離感を保ってプレーしようとしていた。前線も動き出しを怠らなかった。その前線の面々とどのような関係性を築いていくかも後半戦の鍵になる。
イニエスタとの交代でピッチを退いた渡邉千真、ウェリントンの2トップは好調時ならリーグトップクラスの破壊力を持つ。ボールを握るより2人のパワーとスピードをシンプルに使うことで相手の脅威となった試合もある。すでにチームが持っている武器を残しつつ、イニエスタを融合させたいところだ。
ビルドアップの際、イニエスタは最終ラインまで降りてくるようなことがなかった。自分が正しい位置にいればボールは出てくると考えているためで、実際にパスを受ければ丁寧に味方に繋げていった。この日の神戸は自陣での繋ぎが引っかかり、そのまま失点している。ボールワークや各々の動きの質は上げていく必要があるだろう。
チームは0-3と完敗し、イニエスタはデビュー戦を勝利で飾れなかった。だが、Jリーグの舞台に立てたことが重要だ。一人で試合を決めるようなタイプではないが、一緒にプレーする選手のレベルを引き上げる存在であることは間違いない。トラップやパス、ボールの受け方やマークの剥がし方など学べることは多い。それらを一人ひとりが吸収できれば、イニエスタが生きる場面も増えていくだろう。
ピッチに立ったのは約36分だが、神戸のイニエスタがどのような選手かを知ることができた。バルセロナやスペイン代表のユニフォームを着ていなくても、イニエスタがイニエスタであることは変わらなかった。
(文:青木務)
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