世界最高の選手が持つ『完璧』のレベル
神戸にゴールは生まれず、イニエスタが決定機を作ることもなかったが、スペイン人MFの投入でスイッチが入る場面が増えたことは間違いない。イニエスタがボールを持った時の味方の動き出しについても、合流間もないことを考えれば整理されている点も見られた。
神戸でもイニエスタのプレーには無駄がない。パスは正確で、体の向きだけで相手を翻弄することもお手の物。ボールの扱いも含めて完璧という域だが、『完璧』はいくつかのレベルに分けられる。特に、ミスをしないよう安全な選択肢ではなく、勝負に出る時こそ精度が上がる。その瞬間、本当の意味で『完璧』なプレーが飛び出す。
ウェリントンにスルーパスを出した89分のシーンと、91分にドリブルで敵陣に侵入したプレーがそうだろう。前者はファーストタッチの置きどころも、受け手とボールのスピードが計算されたスルーパスも高い精度だった。後者も簡単に相手の逆を取って慌てさせ、ワンツーが成立していればビッグチャンスというシーンだった。
ここぞの場面で発揮する集中力が可能にする正確無比なプレーは、今後さらに研ぎ澄まされていくはずだ。この日は湘南の守備網を破ることはできなかったが、数試合をこなせば相手の警戒レベルを軽々と超えるようなプレーが繰り出されるのではないか。
だからこそ、神戸がイニエスタをどのように組み込んでいくのかが注目される。
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