短時間ながらアジャストしてみせた
投入から3分が経過しようとした61分、アンドレス・イニエスタは自陣でボールを受けると淀みないターンからボールを運び、右サイドを走る味方にパスをつけた。以降、背番号8は何度か攻撃のスイッチを入れている。
68分はウェリントンに、80分には田中順也に、そして89分にも再びウェリントンの前のスペースにボールを送った。いずれも得点には繋がらなかったが、少しずつタイミングは合ってきており、短い時間の中でアジャストしていることを感じさせた。それはイニエスタだけでなく、彼のプレーを感じ取った味方の動き出しにも表れていた。89分のシーンは右に流れたイニエスタがパス交換からフリーでリターンをもらい、右足アウトでコントロールすると、ウェリントンが一気に駆け出した。出し手と受け手の呼吸がピタリと合致した瞬間だった。
また、常にシンプルにプレーするから味方が動き出せばすぐにボールを離し、イニエスタもそこで止まらないため流れが切れない。意図的に攻撃がスピードアップするので自分にも仲間にも無理がない。
それでいてドリブルを始めればその動作で数人を出し抜ける。91分には、体の向きとファーストタッチで1人をかわすとして持ち込む。味方からのリターンが弱くワンツーは窮屈になったが、左PAの角付近からコンビネーションで抜け出し相手を混乱させる一連のプレーは、イニエスタらしさを象徴するものだった。
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