対策が通じない未完のフランス
ブラジル戦で本来の自分たちのサッカーに目覚めたベルギーは、準決勝のフランス戦ではマルアン・フェライニにポール・ポグバをマークさせてフランスの攻撃力を削ごうとした。そしてポグバの影響力を削ぐことには成功している。しかし、フランスには戸惑いもなければ大した打撃も与えられなかった。もともと、そこまでポグバに依存していないからだ。
優勝候補の中で、フランスは最も完成度が低い。非常に強力なのだが、何にも特化していなかった。キリアン・エムバペを右の高い位置に残してカウンターをするために、左にブレーズ・マテュイディというバランスはある。カンテが後ろ、ポグバが前という棲み分けもある。ただ、それで特定の攻守の循環を作っていたわけではなく、たんに個々の選手の特徴を考慮した配置にすぎない。型がないので、対戦相手にすれば的を絞りにくかったと思う。
全員がハードワークするエゴイストのいないフランスは、ディディエ・デシャン監督の率いるチームらしかった。移民系選手の恩恵を受けて優勝したのが20年前、彼らの大半がゲットー化した都市郊外出身という背景から必然ともいえる反乱と分裂を経験したのが8年前。ASモナコやマルセイユで多人種チームを当たり前に指揮してきた監督にとって、アフリカンな選手構成には何の違和感もなかっただろう。
準優勝したクロアチアは、ルカ・モドリッチとイヴァン・ラキティッチを中心に柔軟に対応できる攻守が光っていた。対応力という点ではフランスと似ていて、やはり特化型のチームではない。相手と状況に合わせるのが自分たちの特徴という2チームの決勝になったのは偶然ではない。
(文:西部謙司)
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