必然の敗戦ではあるが…
受け入れるのが難しい敗戦であるはずだが、全試合90分で終わらせてきたフランスはクロアチアより1試合分少なかった。無駄を省いたサッカーを研ぎ澄ませたフランスもまた、相手の出方を見極めて戦えるチーム。さらに、カンテが無理ならエンゾンジをという具合にベンチワークも的確だった。
また、フランスはEURO2016で準優勝しているが、クロアチアのこの世代が国際大会で決勝に進むのはこれが初めて。疲れも溜まっていた。おまけに、ボールを持たないチームが勝つ時代であり、フランスはその時代の申し子のようなチームになりつつある。その点では経験の差が出たのはもちろん、悔やまれる判定があったとしてもクロアチアが頂点に届かないのも必然だったのかもしれない。
それでも、敗者として忘れ去られるには惜しいチームだ。リードを許しながら冷静に試合を運び、カンテの存在を消し去るなどよく練られた戦いを見せた。大会前は好不調の波や守備面の脆弱さが指摘された。だが、ダークホースの域を出なかったチームは試合を重ねるごとに成熟。デヤン・ロブレンとドマゴイ・ヴィーダのセンターバックは最終ラインで壁となり、アキレス腱とされた左サイドバックもイバン・ストゥリニッチが印象的な働きを見せた。
中盤はモドリッチとラキティッチを軸に様々なスタイルを体現し、ペリシッチはロシアの地で新たなステージへ到達した感がある。個性派集団を束ねたズラトコ・ダリッチの手腕も見逃せないポイントだ。ワールドカップ制覇へ最大のチャンスを逃がす格好となったが、勝者と同じくらい輝いたチームでもあった。
(文:青木務)
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