先発の選定、こう対策ともに完璧だったデシャン監督
このポグバの広いパスレンジがあるからこそ、フランスはミドルゾーンで守備を固めてカウンターを狙う戦術を実行することができる。ポグバから繰り出される高い精度と威力のあるパスは、わかっていても止められず、戦況を一変させる力を持つ。
また、69分にはGKロリスがバックパスの処理を誤り、マンジュキッチにゴールを奪われたものの、こういった面も含めてのロリスである。
今大会、フランスが優勝に到達した要因には、デシャン監督による適材適所の采配が挙げられる。右ウイングのエムバペの攻撃力を生かすために左ウイングには定石と言えるデンベレではなく2戦目以降は守備力の高いマテュイディを起用。マテュイディが出場停止となった準々決勝ウルグアイ戦でもデンベレではなくトリッソを起用。また、センターFWのジルーは計546分間のプレーで無得点に終わったものの、ポストプレーと献身的な守備を高く評価して最後まで信頼を貫いた。
さらに交代策でもベルギー戦ではジルーに代えてエンゾンジを投入して高いさという壁を作り1-0の完封勝利を演出し、この試合でもキーマンのカンテを早い段階でエンゾンジに代えて中盤の争いに終止符を打った。仮にカンテを引っ張っていたら同じ結果とはならなかったかもしれない。
選手の特徴を理解し、状況に応じて最適な起用法を見出したデシャン監督の手腕は、今大会のフランスにとって大きな武器となっていた。
どれだけ強大な戦力を有していても、選手任せでチームとして機能させられなかったチームは早々に敗退した。フランス代表は、若く有力の選手を揃えただけでなく、指揮官によるチーム作りが的確に行われたことで世界を制した。
(文:海老沢純一)
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