ポグバの能力が凝縮された20秒間
さらに後半からは浮き球のパスを中心にすることでスピーディーな攻撃を手に入れるとともに、168cmと身長の低いカンテの頭上を通過させることで、その驚異的なボール奪取能力を無効化することにも成功していた。また、カンテとマッチアップとなるモドリッチは低い位置からプレーをスタートすることでプレスを回避した。
そして、前半のイエローカードの効果もあり、55分でカンテを引き摺り下ろすことに成功した。この時点で、ゲームプランで優位に立っていたのはクロアチアだった。
ただし、フランスのデシャン監督は、この状況に対してカンテに代えてエンゾンジを投入。カンテとは真逆の196cmと長身であるエンゾンジを投入することでクロアチアの浮き球のボールを抑え込み、セカンドボールの競り合いでも優位に立った。
この交代策によって試合の流れを手に入れたフランスは、決定的な局面を迎える。
59分、スローインの流れからボールを受けたポグバは、センターサークル付近から右サイドのエムバペに“2つ先へ通す”スルーパスを送る。これに抜け出したエムバペが右サイドからチャンスを作り、パスを受けたグリーズマンがタメを作ると、攻め上がったポグバがミドルレンジからシュートを放つ。一度はクロアチアの守備に阻まれるも、再びボールを拾ったポグバがダイレクトで放ったシュートはゴールネットへ。
このおよそ20秒間は、ポグバ、エムバペ、グリーズマンと攻撃の核となる3選手が絡む理想的な形であり、3-1というスコアと合わせて試合のペースを完全に掌握するものとなった。この得点が決まった瞬間、フランスの優勝は確信に変わったはず。65分にはクロアチアのプレスをかわしてボールをつなぎ、エムバペによる4点目を生み出した。
【次ページ】先発の選定、こう対策ともに完璧だったデシャン監督