分析を生かせるサッカーIQ
分析の結果、あるプレーが有効だと結論が出る。例えば、サイドチェンジが有効だとして指示が出たとする。そこでサイドチェンジが目的になってしまうと、プレーは窮屈になってしまいがちだ。最悪の場合、サイドチェンジが選択肢の第一になってしまって自分の判断ができなくなってしまう。
ラキティッチのような選手は、サイドチェンジをしろと指示されたら、それがなぜかを考える。なぜそれが有効なのか、どんなときに効くのか、その結果どんなことが起こるのか。指示を出した人と同じレベルで理解できる。だから「サイドチェンジ」を通常の自分の判断の中にしまい込み、必要なときに取り出すことができるのだろう。
フィールド上の監督と呼ばれる選手がいる。戦術的にもメンタル的にも、ラキティッチはフィールドの監督になれる。ラキティッチだけでなく、モドリッチもそうだ。クロアチアにはその手の選手が何人かいる。
クロアチアは4-3-3のフォーメーションを基本としているが、中央の右がモドリッチ、左がラキティッチは不動。この2人の前にアンドレイ・クラマリッチを起用すれば4-2-3-1となり、2人の後ろにマルセロ・ブロゾビッチを置けば4-1-4-1になる。
モドリッチ&ラキティッチの立ち位置はいっけんさほど変化がないわけだが、ボランチとインサイドハーフでは優先されるプレーは少し違うし、プレスのかけ方も変わる。ただ、2人にとっては全くそんなことは問題にならない。2人とも中盤ならどのポジション、役割もこなせる。それはブロゾビッチも同様なので、クロアチアは相手によって簡単にフォーメーションを変えてアジャストしている。
サッカーIQの高さは今回のクロアチアの強さの源になっている。
(文:西部謙司)
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