優勝が持つ大きな意味
ただ、初優勝を狙うクロアチアの勝利に賭ける意志は恐るべしだ。
決勝トーナメント以降、3度の延長戦を勝ち抜いた彼らの精神力と粘り強さはただものではない。
この大会では優勝候補と謳われた国が早々に姿を消したが、そこにはワールドカップに賭ける熱量の違いもあるような気がしている。スペインやアルゼンチン、前回優勝者のドイツの選手たちに意欲が欠けていたとは言わないが、初出場チームや開催国のロシア、あるいはクロアチアのような初優勝を夢見る実力国、こういった国の選手たちの意志や熱量は彼らを上回っていた。
そこへいくと、優勝国の一角とはいえフランスの場合は、2010年大会のスキャンダルで国中から猛烈な非難を浴び、ステータスは地に落ちた。一時期の代表の不人気さは悲惨なほどだった。そこからなんとか国民に認めてもらえるチームに復活しようと、デシャン監督指導のもと、懸命に這い上がってきた。その途にあるから、頂点を目指さんとする志や熱量は高い。
ここで頂点に返り咲くことは、汚してしまった代表のステータスを、98年の栄光を復活させるためにも、大きな意味があるのだ。
初優勝に賭けるクロアチアと、復興を志すフランスの対戦は、精神的なタフさを試す面でも、真っ向勝負が期待できそうだ。
ここまできたら、いかに指揮官を信じ、仲間と自分を信じてプレーに集中できるか。
両軍の健闘を祈って…。
(文:小川由紀子【フランス】)
【了】