速すぎるエムバペ。味方は付いていけず?
そこで彼らが得たのは「強固な守備」だけでなく、「チームワーク」だ。
この大会、毎試合繰り返しこの戦術を徹底する中で、みんなで守る、みんなでプレーする、という意思がチームに浸透し、それが勝利という結果をもたらすことで、選手たちにとっての喜びとやりがい、そして一体感はどんどん膨らんでいった。
さらにその上には、稀代のスピードスター、エムバペやグリーズマンのような頼れるカウンターの名手、スーパーセーブでピンチを防いでくれるGKウーゴ・ロリス、という2つの超強力要素もある。
ここで一寸水を差すなら、エムバペのカウンターについては、初動スピードがあまりに速すぎるのか、味方も対応できていない場面がここまで何度もあった。もう前を走っているエムバペに気づかずパバールがもったいない横パスを出していたり、いち早くゴール付近まで到達したエムバペの折り返しのパスに誰も反応できていなかったり。
そういえばリーグ戦でも、マルセイユの右SB酒井宏樹がパリ・サンジェルマン戦でエムバペとマッチアップしたとき、「もう走ってる!という感じでエムバペはとにかく初動が素早い。パスを出す側なら嬉しくなるだろうなと思ったくらい。でも速すぎて味方も対応できていないことも何度もあって、こっちとしてはパスを通されてなくって助かったという感じだった」と話していた。
諸刃の剣というほどの問題点ではないが、ほんの小さなアクションで差が出るであろう頂上対決では、ささいなチャンスも見逃す余裕はない。
しかしけが人もなく、心身ともに万全のコンディションで、フランスは15日の決勝戦、自分たちの戦い方に絶対の自信をもって挑むことだろう。
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