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日本代表 6年前

川島永嗣は本当に「いらない」のか。過剰な批判への疑問、今こそ深めるべきGKへの理解【検証・西野J<6>/ロシアW杯】

シリーズ:検証・西野J text by 舩木渉 photo by Getty Images

GKへの理解を日本サッカー全体の課題に

川島永嗣
原口元気や柴崎岳ら、下の世代の選手たちからも川島永嗣への信頼は厚い【写真:Getty Images】

 失点になっていない場面でも「足が運べていない」「キャッチできた」など、重箱の隅をつつくような批判が見受けられた。だが、「ゴールを守る」という大前提に立てば「足を運べていた」けどゴールを決められましたではダメで、極論「足を運べていな」くてもゴールを守れていれば問題ない。それはミスではない。

 キャッチングも体のどこかが地面についた状態で、ミスが起こらない確証がある場面でなければ決断しにくいものだ。もしバランスが崩れた体勢でキャッチミスが起これば、それ即ち失点となりかねない。「GKとして当たり前のことができていないからミスするんだ」という批判は的外れで、「当たり前」という基礎的な動きばかりを意識してゴールが守れなければ本末転倒。GKにとって「当たり前」は「ゴールを守ること」に他ならない。何を優先して判断を下さなければならなかったのかという点を基準にプレーを評価するべきだ。

 川島が過去に半年間にわたって無所属だった時期や、所属クラブで出場機会が少なかった頃にパフォーマンスレベルを落としていたのは間違いない。だが、ヨーロッパの主要リーグで第3GKからのし上がって正守護神として信頼されていた日本人GKが過去に何人いただろうか。3大会連続でワールドカップに出場して、そのうち2大会でベスト16に進出した日本代表GKが過去にいただろうか。日本の窮地を何度も救ってきたのは誰だったのか。ミスをしないGKなど存在しない。世界最高峰の実力者であるダビド・デ・ヘアやウーゴ・ロリスにもミスはある。

 ロシアの地でベスト8に肉薄できた要因の1つには、間違いなく川島の多大な貢献があった。強靭な精神力でもチームの支柱であり続け、ミスした後の立て直しや、プレッシャーに立ち向かう姿勢も特筆すべきものがあった。

 我々はもう一度冷静になって、川島に対する評価を改めなければならない。そのためにはサッカーを観る側もGKへの理解を深める努力をし、伝える側もGKのパフォーマンスを正しく見極める視点を提供してかなければならないだろう。必ずしも「ビッグセーブをしないGKが優秀」なのではなく「必要なビッグセーブ」と「必要ないビッグセーブ」があるのである。

 吉田麻也は大会中、ツイッターに「ミスした者をこれでもかと叩きのめす悪しき風潮が蔓延しているこの国で、子どもらに本当に見てほしいのはチームスポーツで仲間が苦しんでいる時いかに助け合えるか、そして1人の選手が批判や重圧から逃げずに立ち向かう姿勢。そこに何故、日本人で唯一欧州でGKとしてプレー出来ているかが隠されている」と綴った。

「川島は本当にいらないのか?」という問いに対する答えは、岡田武史、アルベルト・ザッケローニ、ハビエル・アギーレ、ヴァイッド・ハリルホジッチ、西野朗という5人の監督からゴールマウスを任された実績や、周囲の選手たちからの信頼に他ならない。

 一度でも「ダメ」という評価が下れば、その流れが連鎖して一気に伝播してしまい「ミスを許さない風潮」が蔓延る日本社会において、選手のパフォーマンスにも影響しかねない「過剰なクレーム」ともいえる根拠のない批判がまかり通ってしまっている。その流れはここで断ち切らねばならない。世界と戦える日本人GKをさらに多く育てていくためにも、これを機にGKという特殊なポジションへの理解を日本サッカー全体の課題として取り組んでいくべきだろう。

(文:舩木渉)

【了】

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