クロアチアは延長戦に慣れていた
そのまま勝負は延長戦に入ったが、立ち上がりを見てクロアチアの勝利を確信した。イングランドDF陣を目で追い続けると、完全に足が止まっており、CBとWBの距離感はバラバラだった。105分にマリオ・マンジュキッチがフリーでシュートを放ったシーンを見てみても、ジョン・ストーンズは完全に振り切られている。
そして109分、ペリシッチが頭で反らしたボールをマンジュキッチが押し込んだ。この場面でもストーンズは完全に足が止まっており、反応が遅れていた。ペリシッチと競り合ったトリッピアーも疲れからか跳ぶこともままならず。逆に、クロアチアは延長戦でも何度かチャンスを作るなど終始タフだった。疲れを知らぬその献身性は、日本を含め各国が見習うべきだろう。
そして試合終盤に入りトリッピアーがプレー続行困難な状況となった。すでに交代枠4枚を使い切っていたイングランドは残り5分を10人で戦うことに。追いかけているスリーライオンズにとって残された時間はわずかだったが、それでも一人少ない中で戦うという点は非常に難しかっただろう。
クロアチアのズラトコ・ダリッチ監督は、交代カードを90分間で一度も使わなかった。延長前半開始早々にイバン・ストリニッチが負傷により交代を余儀なくされたものの、指揮官は先を見据えていたのかその他の交代を急ぐことはなかった。そして、リードした状況でヴェドラン・チョルルカ、ミラン・バデリといった守備的な選手を一気に投入することに成功した。
延長戦の戦い方に慣れていたのは間違いなくクロアチアだった。90分間で決着をつけられなかったイングランドの敗退は、必然だったのかもしれない。
(文:小澤祐作)
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