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ピックフォードが止めたイングランドの黒歴史。異例のスピード出世GKが守るゴールマウス【西部の目/ロシアW杯】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

若いGKが挑む世界一

 ピックフォードはガレス・サウスゲイト監督がU-21を率いたときの主力だった。U-21欧州選手権でベスト4入りしたときのメンバーだ(ちなみに準決勝のドイツ戦はPK戦で負けている)。イングランドのアンダー世代はU-17、U-20ワールドカップでどちらも優勝していて、まもなく黄金時代が到来するのではないかともいわれている。

 プレミアリーグは外国人選手も多く、アンダー世代で活躍した若手が順調に成長できるかという課題はありそうだが、育成の成功が代表の飛躍につながった例は過去にもポルトガル、フランス、ドイツなど少なくない。ピックフォードはその先駆け的存在といえる。

 サンダーランドのアカデミーで育ち、その後数々のクラブに貸し出された。2017年に現在のエバートンに移籍、移籍金はGKとしては高額の2500万ポンドだった。アンダー世代の代表を経て、A代表デビューを果たしたのが2017年11月の親善試合、ドイツ戦だった。そこから半年あまりでワールドカップメンバーに選出され、正GKに収まったのだから異例のスピード出世だろう。

 GKの人選について、チームの外にいる者にはわからないことが多い。ベテランのハートを外してピックフォードを抜擢したのは傍目にはギャンブルだが、サウスゲイト監督の判断はいまのところ正しかったといえそうだ。

 かつて、あるGKコーチに甲乙つけがたい2人のGKについて聞いたことがある。ところが、そのコーチは「自分にとって優劣は明確だ」と答えていた。普段から練習をしているコーチから見ればそうなのかと、そのときは納得したのだが、コーチが交代すると起用されるGKも代わった。どうもコーチによっても意見は違うようだ。

 多少の難はあっても第一GKを信頼して使い続けて良い結果につながることもあれば、裏目になることもある。試合に出ていないGKの状態はチーム内部、いやGKコーチにしかわからないのだ。

 1966年ワールドカップで優勝したときのイングランドのGKは名手ゴードン・バンクスだった。ベスト4に入った1990年は最多キャップ保持者のピーター・シルトン。世界的にはまだ無名のピックフォードはワールドカップで偉大な先輩に並んだ。

 かつてイングランドはGKの名産地だったが、近年のプレミアリーグは外国人GKに席巻されている。GKだけでなくフィールドプレーヤーもそうだ。その点でも、ピックフォードは有望な若手選手たちへの道を拓く存在といえる。

(文:西部謙司)

【了】

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