ロシアで顕著だった戦術で打ち勝つサッカー
以前からある傾向だったが、ロシアワールドカップでより色濃く出たものがある。それは、中堅以下の国が強豪国を戦術で苦しめ、勝ち点を奪っていったことだ。
メキシコは世界王者ドイツを徹底的に分析して弱点をつき、勝利をあげた。イランやモロッコはスペインとポルトガルを最後まで苦しめ、スウェーデンの守備ブロックは簡単には崩れなかった。開催国ロシアも忘れてならない。スペインを破ったのは偶然ではない。計算されつくされた守備はスペインにすきを与えなかった。
西野ジャパンのサッカーは戦術レベルが低いとは思わないが、相手の弱点をつくというよりも、属人的要素が強かった。香川や乾は高い戦術ビジョンを発揮したが、それはこの2人の能力によるところが大きい。
今後、次世代の香川・乾を育てていくのは重要であることに間違いはないが、別軸でタレントの持つ才能に頼らないサッカーもできるようになるのが理想だ。
ハリルホジッチ体制であれば、そこへの挑戦ができたはずだった。属人的でないサッカーができれば、タレントが小粒でも勝機を見出だせるだけでなく、今大会のように選手の質がともなえば、より大きな目標を狙っていけるのである。
世界各国のレベル差が縮まり、戦術によってその差をひっくり返す。日本はその勝負から出遅れてしまった。あのベルギーでさえ、複数の戦い方を用意して、戦術によってブラジルを倒した事実から目を逸らしてはいけない。
日本はカタールワールドカップに向けて戦術で打ち勝つサッカーを目指していくことになる。本来ならロシアで試行できたことだ。4年遅れの挑戦となる。
西野ジャパンは結果を出した。「感動をありがとう」と思う人も多いだろう。ファンはそれでいい。しかし、日本サッカー協会が、その結果を持ってハリルホジッチ解任を正当化してはいけない。まずは、ハリルホジッチ氏の解任に至った自分たちの落ち度を反省し、適切な検証をすべきだ。今後ベスト8以上を望むなら、そこは避けて通れない。
(文:植田路生)
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