11得点中8得点がセットプレーから
イングランド代表が、次々と歴史を塗り替えている。
ロシアワールドカップの決勝トーナメント1回戦では、ずっと苦手だと言われ続けてきたPK戦に勝利した。ワールドカップでは4度目の挑戦で、勝ったのは初めてだった。
そして迎えた7日の準々決勝。堅守を武器に躍進していたスウェーデンを2-0で下し、28年ぶりのベスト4進出を成し遂げた。スティーブン・ジェラードも、リオ・ファーディナンドも、マイケル・オーウェンも、デイビッド・ベッカムも、さらには現役時代のガレス・サウスゲイト監督も立つことができなかった舞台が、ワールドカップの準決勝である。
スウェーデンの守備のアプローチはこれまでと大きく変わらなかった。4-4-2のコンパクトなブロックを敷き、相手をサイドに追い込んでいく。4バックはペナルティエリアの幅を保つため、中央からシュートを打つのは容易ではない。サイドからクロスを上げても、190cm級の長身DFたちがことごとく跳ね返していく。しばらくはイングランドもこの守備に苦しめられた。
試合の流れが大きく変わったのは、30分だった。アシュリー・ヤングが蹴った左コーナーキックに、中央でハリー・マグワイアが強烈なヘディングシュート。ついにスウェーデンの堅守を破った。
今大会、イングランドはセットプレーで驚異的な強さを発揮している。グループリーグから通じて11得点を奪っているが、流れの中で挙げたゴールはスウェーデン戦の2点目など3つのみ。一方、PKを含むセットプレーから8つものゴールを記録している。
これは今大会で断トツトップの数字であるばかりか、イングランドがワールドカップで優勝した1966年大会と同じ数だという。当時は決勝までの試合数が現在より1試合分少なかったものの、イングランドは計11得点を挙げていた。
セットプレーは試合の流れに関係なくゴールを奪える「別の試合」とも言える。主導権は100%攻撃側にあり、あらかじめ準備したように選手たちを動かし、意図した通りにゴールネットを揺らせる大きなチャンスがある。
ロシアワールドカップではビデオアシスタントレフェリー(VAR)導入の影響もあってPKの増加や、セットプレーからのゴールの重要性が見直されつつあるが、イングランドは大会前から周到に準備を重ねてきた。
鍵になったのは昨年3月からストライカーコーチとして入閣した、アラン・ラッセルという人物である。スコットランド出身で、主に下部リーグでプレーしていた37歳の元ストライカーが、今大会はセットプレーをデザインする仕事にも従事してきた。