西野監督も「ポリバレント」の重要性を強調
また、この日はボランチとして出場したモドリッチは本来トップ下を務める選手。コンビを組んだラキティッチはここまで中盤の底での出場が多いが、セビージャ所属時にはトップ下でプレーしていた。そのため、どちらかが攻め、どちらかが守りという2ボランチを用いるチームによくある光景はこの日のクロアチアでは見られなかった。なぜなら2人とも両方に対応できるからだ。
そして最後はDFのヴィダ。同選手の主戦場はCBだが、SBとしてもプレーできる。
この試合の延長戦、右SBとして先発出場していたシメ・ヴルサリコが足を痛め交代を余儀なくされてしまう。控えにはティン・イェドバイという22歳のSBの選手がいたが、ダリッチ監督がピッチに送り込んだのはベテランのヴェドラン・チョルルカであった。そしてヴィダをSBに回したのである。
確かに22歳のイェドバイにはここまでワールドカップの舞台で出場がなく、コンディション的な懸念点があった。しかも勝負は延長戦に突入している。逆にチョルルカは経験豊富な面に加え、グループリーグ第3節アイスランド戦で出場していた。そのため指揮官は後者をチョイスしたのだった。
だが、それを可能にしたのは間違いなくヴィダだ。同選手がSBを務めることが不可能であれば、同時にCBを主戦場とするチョルルカの投入も無理であったことは間違いない。ポリバレントは、こうした緊急時にも役立つのである。そしてヴィダは、オーバーラップからCKを得て自らこれを沈めたのだ。
ロシアワールドカップ開幕前、日本代表を率いる西野朗監督は中島翔哉落選の理由について「彼は一年間ポリバレントでなかった」とコメントしていた。その後、「全員がポリバレントでないといけないと言ったわけではない」と補足してはいたが、「複数のポジションをこなせるのは大事なこと。本大会に向けてそういう選手も必要」と話していた。そして、その重要性をクロアチアは体現したのである。
西野監督も必要と明言する「ポリバレントな選手」。日本がさらに高みを目指すのであれば、その重要性を改めて問うことになるかもしれない。
(文:小澤祐作)
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