ブレない姿勢でロシアへ。メンタルの弱さを克服
そこに追い打ちをかけるように2018年2月に左足首を負傷。1カ月程度で復帰する見通しだったが、最終的に公式戦に戻ってきたのは5月12日のリーグ最終節・ホッフェンハイム戦。その間にハリル解任と西野朗監督就任という重大な出来事が起き、不遇だった面々の風向きが変わると目されたが、香川の動向には暗雲が立ち込めたままだった。
実際、5月21日にロシア本大会に向けての国内合宿がスタートした時、香川の攻撃的MFでの位置づけは本田、宇佐美貴史、柴崎岳らより下。最終登録メンバーの23人にも滑り込めない可能性があった。それでも彼は「本番だけを見据えてコンディションを上げていく」とブレることなく前だけを見据えていた。
そこが過去の香川との大きな違いだった。少し前までは何かアクシデントがあるとすぐにメンタル的な弱さを露呈し、それに伴ってパフォーマンスも下降線を辿るという悪循環が続いたが、今回は「最後のワールドカップだ」という覚悟を持って挑んだから、苦境から逃げるようなことは決してしなかった。
6月頭に直前合宿地のオーストリア・ゼーフェルト入りした時点でもコンディションが上がり切っておらず、ケガ上がりの乾貴士や岡崎慎司らと全体練習後のランニングを命じられるほどだったが、それを黙々とやり通した。
「コンディションはずっと気を配ってやってきましたし、(心肺機能などの)データもつねにブンデスから見ながらやってきた。3ヶ月ケガをしていた中で果たしてできるのかっていう不安もありましたけど、1試合1試合上がってきた」
香川が述懐する通り、確かに直前テストマッチのガーナ戦、スイス戦で動きのキレと鋭さを取り戻しつつあった。この感触を確信に変えたのが、12日のパラグアイ戦。乾とのコンビから香川は1ゴール2アシストをマーク。本番でトップ下としてフル稼働できる状態へと自分自身を引き上げることに成功する。
この流れを19日の初戦・コロンビア戦でも持続し、開始早々の3分にPKをゲット。そのPKを自ら決め切ったことで、彼は長年背負い続けてきたエースナンバー10の重責を果たすと同時に、4年前の呪縛から解き放たれた。