フットボールチャンネル

代表 6年前

「愛のないセックス」はいらない。ドイツ、スペインを打ち砕いた新時代。8強進出国の共通点【ロシアW杯】

text by 舩木渉 photo by Getty Images

各国に揃う「ポストプレーヤー」たち

メルテンス 大迫 トイボネン
ベルギーのメルテンス、日本の大迫勇也、スウェーデンのトイボネン(左から)ら各国に特色あるポストプレーヤーが揃う【写真:Getty Images】

 クロアチアの前線には守備でも多大な貢献が期待でき、チームのための汚れ仕事を厭わないマリオ・マンジュキッチが君臨する。スウェーデンにも長身で経験豊富なオラ・トイボネンがおり、イングランドはポストプレーだけでなく仕掛けやフィニッシュの局面でも世界最高峰の実力を発揮して得点ランキングトップに立つハリー・ケインが欠かせない。

 加えてベスト16で敗退してしまった国々も多くがポストプレーの得意な選手を抱えていた。メキシコは小柄ながらスペースを活用する技術では世界最高峰のハビエル・エルナンデスが、世界クラスのDFを前に堂々とボールをキープして見せた日本の大迫勇也や香川真司も輝きを放った。デンマークの長身FWニコライ・ヨルゲンセンやアンドレアス・コーネリウス、コロンビアの精神的支柱ラダメル・ファルカオの貢献度も絶大だった。

 今大会では多くのチームが4-4-2や4-1-4-1、あるいは5-4-1などのブロックを敷いて守備を構築していた中で、攻撃はゴールに直線的に向かう傾向が強い。その中で、相手の守備組織のバランスを崩すためのワンアクセントとしてのポストプレーの有効性は、数々のゴールでも示されている。

 例えばフランスがアルゼンチンの望みを打ち砕いた4点目の場面。GKウーゴ・ロリスがアンカーのエンゴロ・カンテにボールを渡す際、すでにブレーズ・マテュイディとポール・ポグバが高い位置をとって相手のセントラルMFを自らに釘づけにしながら外に開いていた。

 それによってカンテが前を向いた瞬間に、グリーズマンへのパスコースが出来上がる。縦パスを受けたグリーズマンは左のマテュイディにボールを渡し、素早くゴール方向へ走り込んだ。味方のお膳立てで前を向いたマテュイディはさらにボールを前に進め、反転したジルーは相手ディフェンスをギリギリまで引きつけて、右サイドをフリーで疾走していたエムバペにラストパス。そして19歳の怪物FWがアルゼンチンを奈落の底へ叩き落とした。

 ポジションごとの役割と、ゴールに向かう際の動き、選手間の連係、決して落ちないスピードなど、様々な要素が噛み合う中で、グリーズマンとジルーの組織を破壊するポストプレーがエムバペの一発をより確実なものにした。

 フランスは初戦のオーストラリア戦でもポストプレーを生かしてゴールに迫っている。オウンゴールと記録された決勝点の場面で、ポグバの縦パスをワンツーで返したエムバペに、オーストラリアのDFトレント・セインズベリーが食いついた。

 その裏にできたスペースにはジルーが侵入しており、ポグバは迷わず屈強な背番号9にボールを預ける。そこに再びオーストラリアの守備陣が複数食いつき、力強さだけでなく足元の柔軟な技術にも長けるジルーは浮き球で走り込むポグバの前にパスを通す。最後はポグバがループシュート。オーストラリアの希望を打ち砕いた。絡んだ全ての選手の特徴が発揮され、ポストプレーがフィニッシュに至る流れで連続して有効だった局面である。

1 2 3 4

KANZENからのお知らせ

scroll top
error: Content is protected !!