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「愛のないセックス」はいらない。ドイツ、スペインを打ち砕いた新時代。8強進出国の共通点【ロシアW杯】

ロシアワールドカップも準々決勝まで到達した。今大会では前回王者ドイツがグループリーグ敗退に終わるなど多くの波乱が起こっている。だが、それも必然だったのかもしれない。常に変化し続けるモダンフットボールでは、慢心を許さない新たな潮流が生まれている。ワールドカップで上位に進出したチームにはある共通点があった。(文:舩木渉)

text by 舩木渉 photo by Getty Images

常にアップデートされるフットボールの世界

スペイン代表
スペイン代表はベスト16で敗退。ロシアの徹底守備をパスで崩しきることができず【写真:Getty Images】

 ロシアワールドカップも終盤に差し掛かり、ベスト8が出揃った。数々の強豪国が予想外の苦戦を強いられ、すでに敗れ去った者たちもいる。

 フランスやベルギーのような優勝候補に挙げられていた国々だけでなく、下馬評の低かったスウェーデンやロシアもベスト8に残っている。彼らがドイツやアルゼンチン、スペインといった列強国を上回ることができた要因を分析すると、ある傾向が見えてきた。

 かつてフランス代表として1998年のワールドカップを制したビセンテ・リザラズは、スペインの華麗なパスサッカーを目にして「ティキ・タカは愛のないセックスのようだ」と評した。ゴールを奪って勝つことがサッカーの本質であるにもかかわらず、彼らのパスワークは手段が目的化してしまった例といえるかもしれない。

 2008年の欧州制覇から2010年のワールドカップ優勝、2012年のEURO2連覇まで、他を圧倒するパスサッカーで世界を席巻したスペインも、2014年のブラジルワールドカップではグループステージ敗退。

 そして今大会、彼らは1試合で1000本以上のパスを繋ぎ25本ものシュートを放ちながら、ベスト16で開催国ロシアを崩しきれなかった。もちろん開幕直前での電撃的な監督交代の影響は避けて通れないテーマではあるが、「愛のないセックス」では栄光をいつまでもつなぎとめることができず、出場国中最もランクの低いチームに敗れた姿は時代の流れを象徴しているようだった。

 サッカーは急速に進歩を遂げている。スペインのように秩序だった華麗なパスワークが持て囃されれば、それを打ち破ろうとピッチにカオスを生み出そうとする者が現れ、無秩序の中から新たな潮流が生まれる。近年はゴールまでの道筋を論理的にデザインし、より効率よく得点を奪って勝利を収める術が研究され発展してきた。

 ポジションごとの立ち位置や役割が明確に整理され、どのように相手ゴールネットを揺らすか、そのプロセスを選手の特徴や組み合わせに応じて構築していく。反対に相手の攻撃の構造を緻密に分析し、丸裸にした上で対抗する方法論も確立されてきた。

 勝利のためにゴールを奪うことを「愛」の絶頂だとすれば、モダンフットボールは小技に頼らず、そこに対して直球で向かっていくことを目指す。深く複雑なフットボールの奥底に眠る真理を探究する試みが、いくつもの鍵を発見し、その鍵をより多く携えてピッチに立った者たちがゲームを制するようになってきている。

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