大きな選手は物事をシンプルにする
ジェフ市原の監督だったころ、イビチャ・オシムは当時の祖母井秀隆GMに「何で、小さな選手ばかり獲ってくるんだ」と文句を言ったことがあるそうだ。オシム監督は小さくて俊敏で賢い選手が好みだったが、大きな選手の価値も軽視していない。日本代表監督のときも巻誠一郎や我那覇和樹をFWに起用していた。
長身で頑健なFWは物事をシンプルにしてくれる。ボールを支配し、パスをつなぎまくっても、どうしてもゴールを割れない。そういう試合は今回のワールドカップでも少なくない。守備側はがっちり引いてスペースを与えくれないからだ。ただ、どんなに守備を固めても空中は空いている。蹴れる場所からハイクロスをペナルティーエリアへ入れ、長身のFWがシュートする、あるいは近くへボールをノックダウンさせれば、それだけでチャンスを作ることができるのだ。
オリビエ・ジルーは193cmの長身、プロレスラーのような頑健な体格。当然、空中戦は強い。ポストプレーも強い。左足のシュートはパワフルで、アルゼンチン戦でのキリアン・エムバペへのアシストのような繊細なパスを出せる。ただ、どちらかといえば不器用なタイプだろう。大きな選手にそんなに器用な選手はいない。リオネル・メッシのようなドリブルはできない。
日本人はサイズの大きさに憧れを持つ半面、「ウドの大木」に代表されるように大男への不信感も根強い。サイズに頼らずにサッカーをやることが国是のような意見すらある。ただ、ないものをねだっても仕方がないが、あるものは使ってもいいはずである。フランス代表はある意味容赦なくジルーを使って対戦相手に圧力をかけている。