コロンビア代表のカルロス・サンチェス【写真:Getty Images】
PKを献上したコロンビア代表のカルロス・サンチェスが、日本戦とイングランド戦の後に殺害予告を受けている。この状況に関して、殺害されたアンドレス・エスコバルの兄であるサンティアゴ氏が、脅迫・誹謗中傷している人に対してメッセージを送ったと、4日に英メディア『chronicle』が報じている。
日本戦では試合開始早々にペナルティエリア内でハンドをとられてレッドカードを提示され退場。10人での戦いを強いられるきっかけとなり、コロンビアは1-2の敗戦を喫している。イングランド戦でも相手にPKを献上するファールを犯していた。
これらのミスから、C・サンチェスは殺害予告を受けるようになった。脅迫の内容は「もしアンドレス・エスコバルがオウンゴールして殺されたのなら、C・サンチェスも殺されるべきで、その体は晒される」というもの。SNS上ではこの予告に賛同も集まった。そしてコロンビアには過去の苦い歴史があり、その再現が起きてしまうのではないかという懸念も生まれている。
というのも、先述の投稿内容にもあるように、コロンビアではワールドカップでオウンゴールを決めてしまい、大会後に殺害された例があるからだ。それが当時27歳だったエスコバルである。
1994年のアメリカワールドカップに、コロンビア代表の守備の中心選手として出場したエスコバルは、グループリーグ初戦のルーマニア戦を1-3で落とした後の第2戦・アメリカ戦に先発出場した。だが、35分にオウンゴールを献上してしまい、チームも1-2で敗戦。コロンビアは決勝トーナメント進出も逃した。
失意の敗退直後、エスコバルはチームの解散後にコロンビアへと帰国した。そしてまだワールドカップが終わっていなかった1994年7月2日の深夜、バーから出たところを襲撃されて12発の弾丸を撃ち込まれて死亡した。
この出来事は「エスコバルの悲劇」として語り継がれ、C・サンチェスも同じような被害に遭ってしまうのではないかと強く懸念されている。とはいえエスコバルが生きていた1990年代前半、麻薬や暴力がまん延していたコロンビアの治安は最悪だったが、もはやそのようなことはなく、治安も劇的に改善されている。
しかし、懸念が消えたわけではない。サンティアゴ氏は脅迫・誹謗中傷している人に対してメッセージを送った。
「サッカーは平和と社会変革の道具であり、単なるゲームに過ぎない。コロンビア代表が期待に応えなかったとしても、私の兄弟に起きた悲劇が繰り返されないことを願っている。神が再び起きることを禁じてくれると祈っている。この悲劇を経験した者の兄弟として、どうにかしなければならないと思っている。もう誰も経験して欲しくないんだ。C・サンチェスは苦しんでいる。自分のミスと、その後の恐怖に。彼の家族も悲しい気持ちのはずだ。私の弟は何も脅迫を受けなかったが、それでも弟は射殺された。今はSNSで何でも言いたいことを言える。死の恐怖がある…という事実は、アンドレスの死から何も学んでいないことを私に示している。こんな人々はサッカーファンではないし、逮捕されて刑務所に入れられるべき存在だ」
【了】