デンマーク代表のニコライ・ヨルゲンセン【写真:Getty Images】
【クロアチア 1-1(PK3-2) デンマーク ロシアワールドカップ決勝トーナメント1回戦】
現地時間1日にロシアワールドカップ決勝トーナメント1回戦が行われ、デンマーク代表はクロアチア代表と対戦しPK戦の末に敗れた。このPK戦でシュートをGKダニエル・スバシッチに止められたデンマークのニコライ・ヨルゲンセンが脅迫の被害に逢っていると、3日にデンマーク紙『BT』が報じている。
試合開始して1分にデンマークのマティアス・ヨルゲンセンがゴールを決めるが、クロアチアのマリオ・マンジュキッチが4分に同点ゴールを決めた。早い時間帯に試合が動いたものの、結局1-1のまま決着つかず。延長戦でも勝敗が決まらなかったため、勝負の行方はPK戦に委ねられた。
デンマーク一人目のクリスティアン・エリクセンが失敗し、反対にクロアチア一人目のミラン・バデリも失敗。その後、お互いに二人目と三人目はPKを成功させた。続くデンマーク四人目のラッセ・シェーネが失敗し、クロアチア四人目のヨシプ・ピバリッチも失敗。
そしてデンマーク五人目のN・ヨルゲンセンが蹴ったボールはGKスバシッチに止められてしまう。対するクロアチア五人目のイバン・ラキティッチはPKを成功させ、クロアチアのベスト8進出が決まった。
同紙によると、この時PKを失敗したN・ヨルゲンセンが死の脅迫を受けているという。「くたばれ」、「ヨルゲンセンに死を」、「お前はデンマークの全てを破壊した」といった脅迫・誹謗中傷などのコメントが、同選手のインスタグラムを中心に書き込まれたようだ。
この問題に関してデンマークサッカー協会(DBU)は「やめるんだ。我々の社会は決して死の脅迫を絶対に受け入れない。例えワールドカップのスター、政治家、その他に者に対しても。卑劣なものであり、絶対に受け入れるわけにはいかない。この狂気を終わらせるため、警察にこの問題を報告した」と声明を発表している。
今大会では、コロンビア代表のカルロス・サンチェスも脅迫を受けていた。日本戦で試合開始早々にペナルティエリア内でハンドをとられてレッドカードを提示され退場。10人での戦いを強いられるきっかけとなり、コロンビアは1-2の敗戦を喫している。
脅迫の内容は「もしアンドレス・エスコバルがオウンゴールして殺されたのなら、カルロス・サンチェスも殺されるべきで、その体は晒される」というもの。SNS上ではこの予告に賛同も集まった。そしてコロンビアには過去の苦い歴史があり、その再現が起きてしまうのではないかという懸念も生まれている。
というのも、先述の投稿内容にもあるように、コロンビアではワールドカップでオウンゴールを決めてしまい、大会後に殺害された例があるからだ。それが当時27歳だったエスコバルである。
1994年のアメリカワールドカップに、コロンビア代表の守備の中心選手として出場したエスコバルは、グループリーグ初戦のルーマニア戦を1-3で落とした後の第2戦・アメリカ戦に先発出場した。だが、35分にオウンゴールを献上してしまい、チームも1-2で敗戦。コロンビアは決勝トーナメント進出も逃した。
失意の敗退直後、エスコバルはチームの解散後にコロンビアへと帰国した。そしてまだワールドカップが終わっていなかった1994年7月2日の深夜、バーから出たところを襲撃されて12発の弾丸を撃ち込まれて死亡した。
この出来事は「エスコバルの悲劇」として語り継がれ、カルロス・サンチェスも同じような被害に遭ってしまうのではないかと強く懸念されている。とはいえエスコバルが生きていた1990年代前半、麻薬や暴力がまん延していたコロンビアの治安は最悪だったが、もはやそのようなことはなく、治安も劇的に改善されている。
【了】