60年ぶり決勝進出も現実的な目標?
1点でも奪ってしまえば、スウェーデンにとってはセーフティリード。焦って攻めてくる相手の攻撃は屈強なDFたちがことごとく潰していく。フィニッシュに持ち込まれても、今大会屈指のシュートストッパとしてグループリーグで注目を集めたGKロビン・オルセンが弾き出す。
イブラヒモビッチ去りし後、個人能力に頼ることができなくなり、組織力の熟成を地道に進めてきた成果がワールドカップのベスト8進出という結果になってあらわれた。1人の絶対的エースに頼らない戦い方が、逆にチームとしての総合力を底上げしたのである。
次なる対戦相手はイングランドで、もしそこでも勝ってベスト4に進出すればロシア対クロアチアの勝者と激突することになる。
スタイルの特性上、スウェーデンはダイナミックなサイドチェンジや個人の突破力で局面を打開しようとするチームを苦手とする。例えばブラジルやウルグアイのような、試合の流れに関係なくゴールを奪えてしまうような組織を超越した力を秘めたチームには、俊敏性に欠けるブロックの網を破られやすい。
ここ2年でほとんど南米勢と対戦していないが、今年3月の親善試合ではチリに敗れ、ワールドカップ直前にはペルーと引き分けるなど、やはり苦しい試合を強いられた。ところが今大会の決勝トーナメントで、スウェーデンが入った山には南米勢がコロンビアしかおらず、そのコロンビアもイングランドとのPK戦の末に敗退してしまったのである。
最近では下馬評の低かったポルトガルが堅守をベースにしたチームでEURO2016を制し、14年前のEURO2004でも守備に振り切れたギリシャが欧州王者に輝いたこともある。今大会4試合でドイツに喫した2失点のみという堅い守りを武器にするスウェーデンも、大きく崩れなければ60年ぶりの決勝進出も現実的な目標として見えてくるかもしれない。
(文:舩木渉)
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