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代表 6年前

勝ち続けるスウェーデン、その戦術とは? イブラなしだからこそ辿り着いた現実主義【ロシアW杯】

text by 舩木渉 photo by Getty Images

理想的な展開で生まれた新背番号10のゴール

 スイスは巨大な壁を前に打開策を見出せなかった。左サイドバックのリカルド・ロドリゲスが度々攻め上がって深い位置に侵入し、実に13本ものクロスを上げたが、1本もゴールに結びつかなかった。最前線には高さと裏に抜けるスピードを兼ね備えたヨシプ・ドルミッチを起用したものの、スウェーデンは中央をガッチリ固め、横からの揺さぶりにも動じなかった。

 お手本のような4-4-2の守備を披露するスウェーデンにとって、大きな課題の1つは得点力だろう。というのも今大会、グループリーグで挙げた5ゴールのうちPKが2本、オウンゴールが1つと、流れの中からのゴールがなかなか生まれていなかった。

 スイス戦でも攻撃の基本的な形は変わらない。ボールを奪う位置は必然的に低くなるため、そこからまず長身の2トップに向けて展開する。身長192cmのオラ・トイボネンと同184cmのマルクス・ベリは1986年生まれの同い年で、少年時代から15年近くコンビを組んできた。互いをよく知り、プレーも阿吽の呼吸。この2人を中心に攻撃をスタートさせる。

 そこに左サイドのエミル・フォルスベリや右サイドのヴィクトル・クラーソンが絡んでいき、一気にゴールへと向かっていく。スイス戦の得点シーンは、これまでに積み上げてきたものが1つの成果として昇華した理想的なものだった。

 相手守備ブロックが間延びしたことで生まれた右サイドのスペースに、センターバックのリンデロフがボールを持ったまま突進し一気に持ち上がる。アタッキングサード(ピッチを横に分割した相手側3分の1のエリア)に入ろうかというところで、右サイドMFとスイッチし、クラーソンは進行方向を変えて中へ。

 この時点で左サイドMFのフォルスベリが中央まで進出しており、クラーソンはフリーで前を向ける状況の背番号10に迷わずボールを預ける。そしてフォルスベリは左にターンして、左サイドに開いていたトイボネンに展開する。

 ペナルティエリアの角でボールを持った長身ストライカーは、自分のところにディフェンスを2人惹きつけると、中央にパスを戻す。それを受けたフォルスベリがシュートの予備動作となる1タッチ目で寄せてきたDFをひらりとかわし、右足を振り抜いた。

 最後は相手DFに当たってGKヤン・ゾマーの逆にシュートが飛んでゴールネットを揺らすことになったが、ゴールまでの一連の流れはスウェーデンにとって理想的なものだった。最終ラインからの恐れのない持ち上がり、トイボネンの利己的にならないポストプレー、イブラヒモビッチから背番号10を受け継いだフォルスベリへの信頼と彼の技術が詰まった先制点である。

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