守備が機能不全に。ベルギーに好都合だった交代策
さらに52分には、ペナルティエリアの手前で、香川からパスを受けた乾にミドルシュートを決められてしまう。カウンターで行ける時は行き、繋ぐ時は繋ぐ。日本の組織力は際立っている。まさにワールドカップのベスト16に相応しいチームだ。
スコアは0-2。このままでは敗北への一途を辿ることになる。65分、ロベルト・マルティネス監督が動いた。カラスコに代えてシャドリを、メルテンスに代えてフェライニを投入。特にフェライニが投入されたことで、中盤に厚みが増しただけでなく、前線にも高さが加わった。
すると、69分、CKからの混戦から、最後はファーでフェルトンゲンがヘディングで折り返したボールがそのままゴールに吸い込まれ、まずは1点を返す。さらに74分には、アザールが左サイドから上げたクロスを、フェライニがヘディングでゴールを決める。同点に追い付いた。ギアを上げていくベルギー。
日本代表は、90分間での決着を目指したのか、81分に柴崎に代えて山口蛍を、原口に代えて本田圭佑を投入してきたが、ベルギー代表にとっては好都合だったと言えるだろう。日本の守備ブロックは緩くなり、前半に比べてカウンター時の守備が、あまり機能しなくなってきた。
そして後半のアディショナルタイムも終わろうとする頃、本田の蹴ったCKをキャッチしたクルトワは、すかさずデブルイネへボールを渡す。デブルイネは中央を独走。右を並走するムニエにパス。ムニエの折り返しを、ルカクはスルー。ファーに走り込んだシャドリが左足で押し込んだ。3-2。土壇場でベルギー代表は逆転に成功する。
最後の最後、ベルギー代表は、持ち前の高速カウンターでベスト8に駒を進めた。一瞬の中に地力の差を示して、ワールドカップに相応しいタフなアジアの雄を、振り切った。
(文:本田千尋【ドイツ】)
【了】