チームの雰囲気は良好。マルティネス監督に油断なし
マルティネス監督はベスト8以降について聞かれると必ず釘を刺す。「ワールドカップは何でも起こりうる。ドイツもアルゼンチンもポルトガルもいない」と。何度聞かれても答えは同じだった。
ベルギーは照準を決勝トーナメントに合わせている。トーナメントが一戦必勝であることを強く認識しており、相手がどこであろうと、ここからはすべて全力を出す。そのためのマネージメントをしてきた。
グループリーグで2連勝すると、最終戦のイングランド戦は9人のスタメンを入れ替えた。意外にも暑いロシアでの疲労を考慮してのものだった。これでベスト16に全力で挑める。さらに負傷中でプレーすること自体が危ぶまれていたディフェンスリーダーのコンパニをイングランド戦で短時間起用。「使える」というテストまでできた。
「2位抜け」という選択肢もあった。イングランドが進んだトーナメントの山はスペインしか優勝経験国がおらず、比較的楽に勝ち上がれると思われた。だが、ベルギーとしてはそうは考えていない。どの国と対戦しても要警戒であるならば、チーム状態を良くすることに全力を傾ける。そちらを選択した。
フレッシュなメンバーでイングランド戦に勝利し、チームの雰囲気はさらに良くなった。練習中も彼らは笑顔が絶えない。強度を高めた練習でも笑いがあり、コーチングスタッフとも明るいトーンで議論をかわしている。
マルティネス監督は「あのイングランド戦で23人全員がセレクションできる状態になった」とサブメンバーにメッセージを送る。サブに甘んじていた選手たちのメンタルケアも怠らない。誰が出てきても、誰が途中から出てきても、ベルギーは心身ともに充実した状態にある。
彼らがここまでの状態にたどり着けたのは、1つの蹉跌があったからだ。