連係しない個
アルベルト・ザッケローニ監督が就任した最初の試合がアルゼンチン戦だった。親善試合とはいえ、日本は1-0で勝利している。リオネル・メッシもプレーしていた。長谷部誠、香川真司、本田圭佑、長友佑都、岡崎慎司、川島永嗣はその試合でプレーしている。そのときはメッシを完封できた。
今大会、エデン・アザールは絶好調。ドリブルの突破力はメッシに比肩しうる破壊力だ。しかし、日本は8年前にメッシを抑えた実績がある。そのときはメッシにスペースを与えず、得意のカットインに対しては2、3人が壁を作るようにして侵入を防いだ。アザールに対しても基本的にこれでいいと思う。
ベルギーはアザール以外にも強烈な個人技を持つ選手が揃う。ドリース・メルテンスはアザールに劣らないドリブラーでありパサーでフィニッシャーだ。ヤニック・フェレイラ・カラスコが左サイドで待機し、ケビン・デ・ブルイネやアクセル・ヴィツェルのキープ力も脅威である。トップには巨体のロメル・ルカクもいる。彼らが本格的に連係しはじめたら日本に止める術はない。ただ、彼らが本当に連係できるかどうか疑問があるのだ。
優れた個も、それが個であるかぎり複数で防ぐことができる。複数でなければ止められない個が連係を始めたら、これはもうどうにもならない。ただし、ベルギーの強烈な個が連係をみせたことはこれまでないといっていい。ベルギーの個の多くはドリブラーだからだ。ドリブラーがドリブルを始め、守備側が複数で対処した時点で、ドリブラーのプレーはすでに制限されている。連係がとりにくい状態になっている。だからドリブラーがドリブラーであるかぎり、そもそも連係は難しいわけだ。
4年前もベルギーは個々の能力の集積で考えれば優勝候補筆頭だった。2年前のEUROでもそうだった。今回も同様。しかしその間、ベルギーの個が高度な連係を確立したことはなく、基本的に個の力で押し切ってきた。そうでなければワールドカップもEUROも優勝しているはずなのだ。