ネイマールを生かす
ブラジルの先制点はコウチーニョがハーフスペースへ落ちてボールを受け、そこからタイミングよく裏へ飛び出したパウリーニョへピンポイントのパスを合わせた形から生まれた。フィリペ・ルイスが占めていたハーフスペースへインサイドハーフが落ちる変化である。
左ウイングとしてプレーしたネイマールは、個の力で何度もカウンターを成功させた。ネイマールに限らずブラジルの選手はカカトでパスを前に運ぶなど、技術の幅を使ってカウンターを加速させるのが上手い。ひと手間かければカウンターにならない場面でも、何とか遅滞なくルートに乗せてしまう。中でもネイマールは格別だった。普通なら手詰まりになってカウンターに行けない場面でも、浮き球でかわし、スピードの変化ですり抜け、カウンターを成立させた。タッチラインを背負ってこそのネイマールだということをチーム全体が再認識できたのではないか。
カウンターは強烈、スローダウンしても上手い。引いても前へ出ても守れる。そして誰が出てもパワーダウンしない。全方位型のブラジルはやはり優勝候補の筆頭だろう。それにしても、出場して10分間で様子を見て立ち位置を決めたフィリペ・ルイスの戦術眼、そのための時間を作ることを共有していたブラジルの試合巧者ぶり、相手を見てプレーを決める習慣、能力はさすがだった。
(文:西部謙司)
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