守備で数的不利にならないために
左のカラスコはオフ・ザ・ボールの巧妙なポジショニングに加えて自在性の高いドリブルを備えており、ムニエ以上に行動パターンが読みにくいサイドハーフだ。もとより高めのポジションを本職とするサイドアタッカーだが、マルティネス監督が3バックのサイドハーフという難しい役割を与え、それに応える形でフィットした。ゴール方向に仕掛けてくるドリブルに加え、味方のサイドチェンジからファーストタッチでペナルティエリアの角に入ってくるなど、視野の外からセンターバックのすぐ外側に入り込んでくる仕掛けは厄介だ。
ベルギーは欧州予選の10試合で43得点を挙げたが、そのうちムニエが5得点、カラスコが3得点を記録している。上記の通りルカク、E・アザール、メルテンス、さらにデ・ブライネの攻撃参加に気をとられると、必ずといっていいほどムニエとカラスコが彼らのすぐ横にあるスペースを狙ってくる。また時にメルテンスやE・アザールが外に開いて彼らがインサイドを突いてくることもあるので、そこからまんまとフリーでラストパスやシュートに持ち込まれる事態にならないようにしたい。
形としてはムニエを長友、カラスコを酒井宏樹がチェックする関係になるが、3-4-2-1の2シャドーに対しても両サイドバックがセンターバックと協力してケアなければ数的不利に陥ってしまう。そのためサイドハーフの乾と原口もムニエとカラスコを縦に挟む形か、状況によっては縦への進路を切れるところまで下げて対応する必要がありそうだ。ただ、そのポジショニングが続くと守備が後ろ向きになりすぎてしまうため、どこで上げてどこで下げるのか、全体の高さも考えながら臨機応変に対応していくことが求められる。
(文:河治良幸)
【了】