真価を発揮するPK戦。歴史の創造者に
「永嗣は『自分が止めなきゃいけない』という思いが強すぎると、相手より先に動いてしまう傾向があるんです。冷静ならしっかり状況判断できるのに、どうしても熱くなってしまいがち。パラグアイ戦はまさにそうでした」と与野西中学校時代の恩師・柏悦郎監督が分析した通り、川島は相手選手よりほんの一歩早めに動き出していた。そういう寸分の判断が勝負の明暗を分けるのだ。
その事実に気づいた川島は8年の月日を経て、PK阻止率を飛躍的に向上させた。
「PKに関しては『信じた方向に100%で行く』ことしか今は考えてないです。『自分が止めなきゃ』とか考え始めた時点で、相手に負けている気がするから。その時の感覚に従うことが大切ですね」と本人も1つの境地に達したことを打ち明ける。
日本代表でその真価が発揮されたのが、2017年3月の最終予選・UAE戦。8カ月ぶりのスタメン復帰戦で難しいPKセーブをやってのけ、チームを窮地から救っている。その底力を示す時がベルギーとの大一番で巡ってくるかもしれない。
「自分がPKを得意だとは思っていないけど、とにかくその状況になれば自分を信じてやるしかない。自分達の目標はまだ上にあるとみんな感じているし、そのために明日は全てを賭けたいと思います」と本人もPKを含めた全ての仕事を全力でやり切って、新たな歴史の創造者になるつもりだ。
川島とともにピッチに立つイレブンは、19日のコロンビア戦と24日のセネガル戦と同様、DF(右から)酒井宏樹、吉田麻也、昌子源、長友佑都、ボランチ・長谷部誠、柴崎岳、右MF原口元気、左MF乾貴士、トップ下・香川、FW大迫勇也だと見られる。
相手の3-4-2-1とはミスマッチになるが、そのギャップを使わせず、逆に日本がスペースを使うような展開に持っていけるようになれば、川島の負担も減る。
そうなれば理想的ではあるが、守護神が大忙しになっても今の彼なら落ち着いて対処できる。圧倒的に強い目力を取り戻した川島永嗣は必ずや日本を未知なるステージへ導いてくれるはずだ。
(取材・文:元川悦子【ロストフ】)
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