「支配は地獄」
そして、コケ、アスパスがPKを失敗。対するロシアはキッカー全員が成功を収め、PK戦4-3でベスト8入りを果たした。
今大会4試合中、3試合で失点を喫したスペインのDF陣は最後までパフォーマンスが上がらなかった。GKのダビド・デ・ヘアもクラブでの出来とは程遠い内容に終始した。さらに攻撃陣も、効果的な崩しを見つけ出すことができず。そうした状況が一気に重なり、無念の敗退を強いられてしまった。
2008、2012年のEUROを制し、2010年南アフリカ大会で王者に輝いたスペインは、間違いなく一時代を築いた。誰もがあの「ティキ・タカ」に魅了されたし、ポゼッションが試合を制する、ということも、この無敵艦隊から教わった。
だがメキシコがドイツを破ったように、リバプールとレアル・マドリーがチャンピオンズリーグ決勝に残ったように、時代は明らかにカウンター、堅守速攻型へと変わってきている。
スペイン紙『マルカ』は公式ツイッターで「サイクルの終わり」と同国の敗退を嘆いており、記事内でも「支配は地獄」とポゼッションスタイルを痛烈に批判した。支配率を高めるだけでは勝つことができない。ポゼッションサッカーは限界に達した。今大会4試合でわずか1勝しか挙げられなかった無敵艦隊が、それを証明したのではないか。
さらにこの試合の後、イニエスタは代表引退を表明した。一時代を築いた人物がまた一人去る。スペインはここから、新しい時代に突入しなければならない。
もはや8年前の王者の姿はどこにもない。決勝トーナメント1回戦、対ロシアとのゲームはまるで、時代の終着点であった。
(文:小澤祐作)
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