モドリッチやチョルルカも追放を支持
4ヶ国の実力が拮抗し、ロシアワールドカップにおいて最も「死の組」に近いとされたグループD。ナイジェリア、アルゼンチン、アイスランドといった難敵を次々と蹴散らしたクロアチア代表は、優勝候補の一角へと躍り出た。巷でよく使われる「監督解任ブースト」という言葉に習うのならば、クロアチア代表が発動させたのは「選手追放ブースト」だ。犠牲になった造反者は、FWニコラ・カリニッチである。
事件が起こったのは、6月16日に行われた初戦のナイジェリア戦だった。2-0とリードした残り5分、ズラトコ・ダリッチ監督からFWマリオ・マンジュキッチとの交代出場を指示されるも、カリニッチは背中の痛みを訴えて拒否。試合後はチームメイトと勝利を祝うことなく、1人だけドレッシングルームに直行してしまった。
チームの和を乱す行為に対してダリッチ監督はカリニッチ本人の説明と謝罪を待ったが、翌日も監督に挨拶することもなく不遜な態度を取り続けた。これを重く見た指揮官は、主将のMFルカ・モドリッチと重鎮のDFヴェドラン・チョルルカに相談を持ちかけた。
「監督、選択肢なんてないですよ。奴をチームから追放して下さい」
両者の支持を取りつけたダリッチ監督は、カリニッチに対してロシアからの帰国を命令。荷物をまとめたカリニッチはメッセンジャーアプリで「幸運を祈る」とチームメイト全員にメッセージを送ったものの、反応したのは2人しかいなかったという。6月18日、事件発覚後最初の囲み取材で、ダリッチ監督はやや紅潮した顔でメディアの前に立った。
「ナイジェリア戦でウォーミングアップを終えたニコラは後半にピッチに入る必要があったが、『背中が痛くて入る準備ができていない』と言った。同様のことがブラジルとの親善試合(6月3日)でも起こっており、昨日の練習でも彼は準備ができていなかった。私はそれを冷静に受け止めた。彼は3度に渡って『準備ができていない』と言う。私は準備ができた選手、健康な選手が必要なので、彼を家に送り返すことに決めたんだ」
簡潔に、それも外交的にカリニッチ追放の経緯を説明したが、口調から造反劇が起きたことはありありだった。