同質性の中の異物
スペインのCBは攻撃時に相手陣内まで前進する。ハーフウェイラインを越え、敵陣の半分ぐらいまで行くこともある。相手が全員引いているからだが、そのためにカウンターを初動段階で潰すこともできるわけだ。ハーフウェイラインで待ち受けていたら、この守備は機能しない。しかし、ここで取れなければ一気にゴール前まで行かれてしまう。
スペインにとって先制してしまえば試合はかなり楽になる。相手は前に出てこざるを得ない。出てこなければ、いつまでもパスを回していることができる。2010年南アフリカワールドカップで優勝したときの逆カテナチオだ。あのときのスペインはノックアウトラウンドをことごとく1-0で勝っている。
亀の子戦法の相手に対して点を取るには、きれいに崩すだけでなく強引さも必要になる。そのときに最も頼りになるのはジエゴ・コスタだ。華麗なパスワークのサッカーに武闘派のFWはミスマッチにも思えるが、同質性の高いチームの中の異物がカギになる働きをするのはサッカーでよく起こる現象である。
(文:西部謙司)
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