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猛獣スアレスはここ一番で牙を剥く。頼れる相棒と共に、フルパワーの瞬間が歓喜の合図【西部の目/ロシアW杯】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

肉食系ストライカー

 スアレスは明らかに肉食系のストライカーだ。もっとも点取り屋で草食系はあまりいないのだが、スアレスはライオンや虎や猫のようにゴールを狩る。獲物を見つけたときの豹変ぶりが肉食らしい。

 チャンスの匂いがするまで、スアレスはダラダラと過ごしている。必要なときは守備にもしっかり入るが、必要もないのに動き回ったりはしない。そしてチャンスが来ると急に動く。ゆっくり気配を消して獲物に近づき、フルパワーで襲いかかっていく。

 グループリーグ最終戦のロシア戦、スアレスは相手のミスパスを見逃さずに食いつき、FKを得ると容赦のない一撃を叩き込んだ。ペナルティーエリアのすぐ外、壁を越して落とすには近すぎる。と、このときちょっと不可解なことが起こった。

 ロシアの壁の端にウルグアイの選手が並んでいた。これ自体は普通である。壁を越すのが難しい以上、このロシアの壁に並んだウルグアイ人がキックの瞬間に動いてシュートコースを開けるというのはよくあるトリックだ。ところが、スアレスが助走に入るとなぜかロシアの選手が2人のウルグアイ人をどかしにかかったのだ。自ら動いてコースを開けるまでもなく、ロシアのほうから壁を壊しにかかった。

 壁に並んだウルグアイ人がジャンプして、その下を狙うと考えたのだろう。日本対コロンビアでのキンテロの同点FKが頭をよぎったのかもしれない。だったら壁ごと破壊してしまえということだろうか。

 ただ、そんな駆け引きとは無関係に、スアレスは見えているポストめがけて低いシュートを力一杯蹴り込んでしまった。壁などあってもなくても同じだった。

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