長谷部の積み上げた経験が原動力に
海外組がほんの数人しかいなかった南アの時と異なり、現在は半数以上が海外組。吉田麻也や岡崎慎司のようにベルギーのロメル・ルカクやエデン・アザールとイングランド・プレミアリーグで日常的に戦っている選手もいて、相手に物怖じすることなく戦えるようになった。昨年11月にブルージュでベルギーに挑んだ時も結果的には0-1で敗れたが、決して力負けしたわけではない。少なくとも意識の部分ではそこまで差はないと言っても過言ではない。
ドイツで足掛け11年プレーしてきた長谷部も世界トップクラスのアタッカーと対峙し、体を張って守ってきた経験は数多くある。それを最大限生かしつつ、チーム全体を効率よく動かすことができれば、必ずコロンビアを撃破した時のような高いインテンシティーと組織力で対抗できる。そういう日本の強みを発揮させるように仕向けていくことが、背番号17をつける絶対的リーダーに課せられる最重要命題と言っていい。
西野監督は今回のロシアワールドカップを戦うに当たり、経験豊富なメンバーを重視したが、大会後はさすがに若返りの方向へ舵を切らざるを得なくなるだろう。長谷部が今もボランチ陣の中で絶大な存在感を誇っているのは事実だが、いつまでも彼に頼っていられないのも確か。最多キャップ数の152試合を誇る遠藤保仁がヴァイッド・ハリルホジッチ前監督から年齢を理由に招集見送りにされたように、長谷部もロシアを境に同じ扱いを受けることも十分に考えられる。
もしかすると、今回のベルギー戦が最後の大舞台になる可能性もゼロではないだけに、絶対に悔いの残らない戦いをすること。それが今の彼に強く求められるテーマだ。
「日本代表って場所はもういつ誰が選ばれるか分からない場所だと思っている。今までも目の前の1試合に全身全霊を賭けてきたし、それは僕の中では変わらない」と本人は語気を強めたが、そのスタイルを全うすべく、ベルギー戦ではチームの勝利のために身を粉にするリーダーの姿をこれまで以上に強く押し出す必要がある。
今こそ長谷部誠の積み上げてきたものを全て出し切ること。それが8強の壁を破る力強い原動力になるはずだ。
(取材・文:元川悦子【カザン】)
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