『キッカー』は特に触れず。各紙で異なる捉え方
さらに『シュポルト・ビルト』電子版は、「ボルゴグラードとヒホンのわずかな違い」として、日本に「ハラキリの可能性」もあったことを伝えている。もし他会場でセネガルがコロンビアに追い付いていたら、日本はワールドカップから敗退していた。
記事中では公共放送ARDの解説者である元ドイツ代表トーマス・ヒッツルスペルガー氏のコメントも紹介。
「あのようなシーンをW杯で見るのは残念だ。それに対してポーランドが何の手も打たなかったこともまた残念だね」
このように『シュポルト・ビルト』電子版のような手厳しい評価を下すメディアがある一方で、淡々と事実を伝えるメディアもある。
日本代表対ポーランド代表戦を伝える『キッカー』電子版の見出しは次のとおり。
「フェアプレー採点のおかげでー日本は敗北にもかかわらず先に進む」
記事中には、日本代表の“パス回し”を非難する様子は見受けられない。「ヒホンの恥」が引き合いに出されることもない。
ただ単に「最後の数分間ではピッチ上で全くそれ以上何も起こらなかった」と記され、他会場でコロンビアがセネガルを相手に1-0でリードし、フェアプレー採点により16強進出を確実にした、といったことが解説されている。
「観客席からの耳をつんざくようなブーイングは日本を揺り動かさなかった」とも記されているが、やはり事実を記しただけ。なぜ日本はブーイングに反応して攻めに転じなかったのか、といったような論調は見当たらない。
「ヒホンの恥」という歴史を持つドイツサッカー。だが、ポーランド戦の終盤に日本代表が見せた“パス回し”=“アンチ・フットボール”と捉えるかどうかは、それぞれのメディアで分かれている。
(文:本田千尋【ドイツ】)
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