グリーズマンの覚醒はいつに?
ここまで目立った活躍がないと指摘されているレ・ブルーのエース、アントワーヌ・グリーズマンだが、思い返せば2年前のEUROでも、彼はグループリーグではおとなしかった。それがラウンド16でいきなり2得点をあげ、決勝ラウンドだけで5ゴール、計6得点で結局大会を得点王で終えているから、前述のセベラック記者も予想するように、彼が本領発揮する時はそのうちやって来るだろう。
ここまでも、彼が不調というより、システムに十分フィットしていない印象だ。開幕前、「ジルーとムバッペの足を踏まないようにしないと」とジョーク混じりに語っていたが、スペース内でどう自分が動くかがしっくりきていない感じが見受けられるから、そのあたりが解消されれば加速的にパフォーマンスが向上しそうな気もする。
ただ、フランスのファンたちが安心しきっているほどアルゼンチンが土曜の試合でも低調かどうかは測りかねるところだ。
簡単には解決しがたい根深い問題を抱えているならそれも期待できるが、ふがいないグループリーグでの戦いぶりを反省材料に奮起してくる可能性も十分にある。
特に、第3戦目のナイジェリア戦では、試合終了間際のマルコス・ロホのゴールで勝利を決める、という興奮を味わい、アドレナリンは噴出、自信も得ている。
それにアンヘル・ディ・マリアなど、試合ごとに大化けする恐ろしい選手もいる。所属するパリSGでもそうなのだが、透明人間のような試合もあれば、触るボールすべてが凶器のように相手に突き刺さるキレッキレの日もある。フランス戦がその日かもしれない。
ただ、これまで選手としても指揮官としても多くのものを勝ち取ってきたデシャン監督の『勝者のスピリッツ』の効用も侮れない。
ここでアルゼンチンを破って準々決勝に進み、そこでポルトガルと当たって、2年前のユーロの決勝戦で優勝をさらわれた相手に勝って雪辱を晴らすことができたら、フランスにとっては夢のシナリオだ。
(文:小川由紀子【フランス】)
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