博打に勝った西野監督と日本代表
後半開始早々に岡崎が負傷交代、大迫が入る。このタイミングでの交代は想定外だと思う。さらにポーランドの逆襲がハマりはじめていた。53分のロングカウンターはレバンドフスキへラストパスが入る寸前でGK川島がインターセプト。74分にはカウンターで日本の左サイドを攻略され、レバンドフスキにシュートされるがバーの上。さらにクロスボールを槙野がカットするが、危うくオウンゴールになりかける。こちらも川島が防いで事なきを得た。
レバンドフスキがほとんど守備をしないポーランドに対して、山口と柴崎岳が相手2トップの脇に下りてパスを集配、ビルドアップは問題ない。ただし、そこからバイタルエリアへのパスが通らず攻撃は停滞する。宇佐美を乾に代えてテコ入れを図るが、さほど事態は好転せず。
そのころコロンビアが先制点をゲット、日本は最後の交代カードとして長谷部をフィールドへ送る。長谷部の投入に戦術的な意味はない。この試合を凍結するための伝令だ。失点しないこと、カードをもらわないこと、そしてロスタイムを含めると10分間ほど残っているこの試合をここで終わりにする意思をポーランドに知らせること。あとはコロンビア対セネガルがそのまま終わるのに期待するのみ。他力本願だが、そうすることに決めたわけだ。
日本の“談合試合”は2004年のアジアカップでのイラン戦でもあった。そのまま終わればどちらもグループリーグを突破できる状況で、先に打ち方やめにしたのはイランだった。今回は日本が先導した。
グループリーグ最終戦で、このような試合になるのは珍しくない。1982年ワールドカップの西ドイツ対オーストリアは有名な出来レースである。この一件が問題視されたので、以降FIFAはグループリーグ最終戦の2試合を同時刻に行うことにした。ただ、それでも残り数分間で調整が起こることは避けられない。今回は裏カードのコロンビア対セネガルがそのまま1-0で終わる保証はどこにもなく、リスクを伴うのでただの“談合試合”とは違っている。
結果的に日本はグループ2位で際どく勝ち抜けられた。そして主力選手を休ませ、これまでプレー機会のなかった選手を起用することもできた。実質80分間の試合で疲労も軽減できた。まさに結果オーライなのだが、最善の形でノックアウトラウンドに進めた。
(文:西部謙司)
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