グループ敗退も示した韓国らしさ
正直なところ、直前の2試合で韓国のサッカーには焦りや恐れが感じられた。一体どのようなサッカーがしたいのかがはっきりと見えなかった。スウェーデン戦は布陣から相手にビビっていた。メキシコ戦で多少は改善するも、ディテールのプランがなかった。その焦りが順当な結果に繋がっただけだった。
それゆえ、これらの不安定な試合から一新し、自分たちのサッカーを貫いたことは評価に値する。シン監督も試合後「ドイツのほうが勝ち点を欲しがっていると思った。そこから出る焦りが絶対あると思っていた。だからそこを突き詰めて攻略していこうと思いっていた。計画通りの試合」だと説明している。勝利への執念も思う存分見せてくれた。
また韓国はこの勝利で数々の記録を塗り替えた。アジアのチームが前大会王者を倒したのはワールドカップ史上初のことだという。また、ドイツがワールドカップのグループリーグで最下位になったのも今大会が初めてのことで、当然グループリーグ敗退も今回が初めてだという。この番狂わせの主人公が、韓国なのだ。
だが惜しくも目標達成には一歩届かなかった。韓国の勝ち点はたったの「3」。一方のメキシコがスウェーデンにまさかの0-3での敗北を喫し、この両国が勝ち点6を獲得。グループリーグの突破が決定した。ベスト16入りを目標としていたが、残念ながら失敗に終わった。
それでも私はこの勝利を「歴史的勝利」としたい。世界1位のチームを相手に、最後まで挫けずに自分たちのサッカーに集中した末、手にした結果だ。最後まで諦める選手が誰一人なかったことにも嬉しさを感じている。呆気なく負けてしまった2試合の悔しさを晴らし、最高の形で有終の美を飾ったと称えたい。
そもそも韓国が望んでいたのはこういう熱い試合だった。韓国は2006年以来ユニフォームに「闘魂」という単語をプリンティングしている。「負けてもいいから闘魂の溢れる、熱い試合をしてくれ」という、国民から送られたメッセージだ。
そしてついに、熱き戦いぶりで前大会王者を倒した。記録はもちろん、人々の記憶にも鮮やかに焼きつけられた。今日だけは闘魂が満ち溢れていたこの勝利に酔いしれたい。
(文:キム・ドンヒョン【韓国】)
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