監督の言葉に潜む敗因
しかし、単調な攻めは変わらず。前掛かりになった分、かえって韓国に何度かカウンターを許した。さらにスウェーデンは62分、74分とリードを広げていく。これで2位メキシコの得失点差はマイナスになったので、ドイツは韓国から1点奪って1-0で勝利しさえすれば良かったが、その1点があまりに遠かった。途中から交代で入ったマリオ・ゴメスもトーマス・ミュラーも、効果的なプレーをすることはできず。そもそも即興性に頼る以外に攻撃の形があったのか疑わしいレベルである。
もちろん前半にカウンターで行ける時には行ったように、攻撃のパターンがまるでなかったわけではない。しかし、そもそものゲームプランを含め、対韓国戦ではチームとしてのポテンシャルを発揮することはできなかった。
86分にマッツ・フンメルスがヘディングで決定機を外すと、後半のアディショナルタイムに悪夢が待っていた。
ソン・フンミンが右CKを蹴ると、ゴール前で混戦から、最後はキム・ヨングォンが押し込んでゴール。1度はオフサイドの判定が下ったが、ビデオ判定で覆った。
さらに終了間際には、敵陣に入ったGKマヌエル・ノイアーがボールを奪われてカウンターを許す。ロンボールをソン・フンミンは無人のゴールに押し込むだけで良かった。
韓国に0-2で敗れたドイツは、グループFの最下位に転落。敗退が決定し、ここにワールドカップ連覇の夢は絶たれた。
レーブ監督によれば、試合後、ドイツ代表のロッカールームを“死の沈黙”が覆ったという。指揮官は「現在私が感じていることの全ては巨大な失望だよ。韓国に敗れることは1度もイメージしなかった」とも述べている。
しかしこの言葉の中に、敗因が潜んでいるのではないか。相手は韓国だ、普通にプレーしていればその内ゴールは決まる―そんな気の緩みが。
スウェーデン戦での劇的な勝利が、メキシコ相手の苦い敗戦の味を忘れさせてしまったのか。もちろん敗因を1つに絞ることはできない。大会前の準備も含め、これから協会による考察が始まるだろう。
ただ確かなのは、ドイツ代表は世界王者の称号を失った。次のカタール大会にはチャレンジャーとして挑むことになる。それだけは事実だ。
(文:本田千尋)
【了】