“王国の美学”をさらに高める守備力
かつてのブラジル代表といえば、攻撃に美学を持ち、“守備的サッカー”で優勝するよりも“超攻撃的サッカー”で美しく散る方がいいとされてきた。しかし、今はそのような時代ではない。守備の安定が攻撃力を高め、観客を魅了するサッカーへとつながる。
そして、この高い守備力の中で、攻撃面で躍動感を見せているのがインサイドハーフのフィリペ・コウチーニョである。
コウチーニョは、初戦と第2戦で先制ゴールを決め、今回はパウリーニョの先制ゴールをアシストした。中盤でボールを持ったコウチーニョは、パス成功率で初戦89.6%、第2戦92%、第3戦90.9%と何も高い数値を記録し、ゲームメイカーとしてブラジルの攻撃を作り上げている。
このコウチーニョの存在が攻撃面でネイマールに依存しない最大の理由となっている。コウチーニョが攻撃のリズム作りつつ決定的な仕事もできることで、ネイマールが「アクセント」となれる。相手にとっては、ネイマールが攻撃の全てとなるより数段厄介な状況となっている。
決勝トーナメント1回戦の相手となるメキシコは、グループリーグ初戦で見事なカウンターを披露して王者ドイツを敗退に追い込むきっかけを作った。しかし、この高い完成度を持つブラジルを相手に再びサプライズを起こすのか、王国の力がそれを跳ね返すのか。次のラウンドでも最も楽しみな一戦となった。
(文:海老沢純一)
【了】