ペルーの思惑通りの展開に。戦術面のちぐはぐさも
まさにその通りの展開になった。18分、オーストラリアが自陣から運んできたボールを右サイドで奪ったペルーは、相手守備陣が戻り切る前にジョシマール・ジョトゥンのロングボールで前線へ一気に展開する。
オーストラリアの最終ラインを破ってペナルティエリア内左に飛び出たエースFWパオロ・ゲレーロは、少し溜めて逆サイドから遅れて走り込んできた選手に浮き球のラストパス。最後はアンドレ・カリージョが見事なボレーシュートを突き刺した。
さらに50分、ペルーは自陣でボールを持ったところから、左サイドで一気にスピードを上げてオーストラリアのゴールに迫った。左ウィングのエディソン・フローレスがボールを持ったまま相手ディフェンス2人を引きつけ、左サイドバックのミゲル・トラウコとワンツーで抜け出してぐんぐん前に進む。
そのままペナルティエリア内まで侵入し、カットインして相手ディフェンス3人の視線を釘づけにしてラストパス。このボールは相手に当たってコースが変わったが、ゴール前に詰めていたゲレーロが豪快な一発を叩き込んだ。
オーストラリアは堪らず動く。53分、最前線のトミ・ユリッチに代えて、ティム・ケーヒルを投入して勝負に出る。ただ、皮肉だったのはこの交代によってクロスボールが増えたことだった。38歳の大ベテランがヘディングを得意としているのはよく知られたことだが、ユリッチも191cmの長身を誇る本格派ストライカーである。
前半はペルーの右サイドバックの裏を積極的に狙っていたオーストラリアだが、時にカウンター、時にゆったりとしたボール回しを使い分ける相手にペースを崩された。勝利への貪欲さでもワールドカップで40年ぶりの1勝を狙うペルーに劣っていたのではないだろうか。
おそらく今大会で「ケーヒルの時代」は終わる。ロシアの地で、大会最年少のダニエル・アルザニーが3試合に途中出場して可能性を感じさせたのは、オーストラリアサッカー界の将来に向けてポジティブな材料と言える。
ちょうど1年前にアジア王者として挑んだコンフェデレーションズカップではグループリーグ敗退でもポステコグルー監督が導入した3バックとパッシングフットボールでドイツやチリ、カメルーンに善戦して確実な前進を感じさせた。だが、予選後の監督交代という緊急事態からタレント不足を補うだけの策を用意できず、ワールドカップで1勝も挙げることなくグループ最下位で敗退とになったのは、継続性を欠いた末の必然だった。
(文:舩木渉)
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