支配率が勝利に直結せず
だが、肝心の「ティキタカ」の完成度はあまり高くない。やはり8年前と比べると破壊力は格段に落ちてしまう。世界的にGK、DFのレベルが上がっているという点は否めないが、パスを回すだけで崩しきれていないというのは確か。現地時間25日に行われたグループリーグB組第3節のモロッコ戦はまさに、そういった部分が露呈してしまったゲームであった。
負ければ敗退という可能性も残していた中で試合に挑んだスペインは、立ち上がりからボールを支配する。特に左サイドのイスコと真ん中のイニエスタを中心に素早くパスを回していた印象だ。
14分にイニエスタのらしからぬミスからカリド・ブタイブに先制ゴールを挙げられるが、スペインは焦りの色をみせなかった。そして19分、中盤でボールを受けたイニエスタが中に絞ってきたイスコへ縦パスを供給。前を向いた背番号22はジエゴ・コスタに楔のパスを入れると、PA内に侵入してきたイニエスタへワンタッチでパス。最初のボールタッチでDFを交わした背番号6がイスコに折り返し、そのまま同点弾を叩き込んだ。まさにスペインサッカーの象徴とも呼べる得点シーンである。
しかし以降が続かなかった。スペインはボールを回すのみで決定機を迎えられない。データサイト『Whoscored』による試合後のスタッツでは、ボール支配率驚異の75%を記録しており、シュート数も18本放っているが、そのうち12本は枠外シュートとなっている。シュート数だけでみれば、決定機を多く作っているようにも思えるが、そのうちのほとんどは苦し紛れのシュート、もしくはセットプレーによるものである。持ち味の「ティキタカ」で崩し切ったという印象は残念ながらなかった。
スペインはパスを回し、無理やりシュートを放つ。そういった無限回廊の中に迷い込んでしまっていた。