常に薄氷の勝利。蘇る欧州制覇の記憶
ボールを持たせればクリスティアーノ・ロナウドは活きない。レアル・マドリーではすでにあらわになっていた事実だったが、やはりポルトガル代表も然りだった。むしろマドリーの中盤より数段クオリティの落ちるポルトガル代表では尚更と言える。
結果的にクアレスマのスーパーゴールによって先制し、終盤にPKを与えたものの引き分けで決勝トーナメントへの進出は決めることができた。1回戦で激突するウルグアイを筆頭に今後対戦する可能性のあるチームにとっては良いヒントとなったはず。
とはいえ、思い起こされるのは2年前にフランスで開催されたEUROだ。ポルトガルは、この大会でグループリーグでは3戦引き分けと勝利を挙げられず出場国数拡大によるレギュレーション変更で3位ながら拾われる形で決勝トーナメントに進出した。
さらにその後は、1回戦でクロアチアに延長で1-0、準々決勝ではポーランドにPK戦の末に勝利、準決勝ではウェールズに2-0、決勝では開催国フランスに延長戦の末に1-0とウェールズ戦を除いては全て“薄氷の勝利”で欧州王者のタイトルを手に入れた。
そして今回もスペインに3-3、モロッコに1-0、イランに1-1と“薄氷”といえる結果で決勝トーナメントに勝ち上がった。
「快勝はしなくとも薄氷の勝利で勝ち上がる」。現在のポルトガル代表はそういうメンタリティを持っているのだろう。そして、それは今回のイラン戦でも見せたようにDFペペを中心とした守備力が根底にある。
2年前のEUROを再現するかのような戦いを続けているポルトガル代表だけに、再び薄氷の勝利で栄冠を手にする可能性も低いとは言えないだろう。
(文:海老沢純一)
【了】