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乾貴士こそ日本のエース。栄光と挫折、そして復活。終わらないサクセスストーリー【ロシアW杯】

text by 編集部 photo by Getty Images

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乾貴士こそ日本のエースだ【写真:Getty Images】

【日本 2-2 セネガル ロシアワールドカップ・グループリーグH組第2節】

「決定力がないとサッカー人生でずっと言われてきている」男が、4年に一度の祭典で大仕事をやってのけた。

 ロシアワールドカップ・グループリーグ第2戦、セネガルを相手に日本は1点リードを許していた。そんな中で迎えた34分、ペナルティーエリア左でボールを持った乾貴士は冷静なキックでゴールネットを揺らし、同点ゴールを奪った。「得意のコースでしたし、思い切って打ってみようと」。乾に迷いはなかった。

 高校時代から類まれなボールタッチと滑らかで鋭いドリブルには定評があった。野洲高校では2年生の時に全国高校サッカー選手権大会を制覇。『セクシーフットボール』と称されるなど華麗なプレーを連発するチームで、乾もレギュラーとして日本一に貢献した。

 高校卒業後は鳴り物入りで横浜F・マリノスに入団。すでにU-21日本代表に選出されるなど世代屈指の大物だったが、横浜FMでは出場機会に恵まれなかった。転機となったのはプロ入りから約1年半後。セレッソ大阪のユニフォームに袖を通してプレーするようになると、乾は水を得た魚のように躍動する。

 香川真司とは最高のコンビになった。2009年にはJ2ながら20得点を挙げるなど爆発。アタッカーとして一段ステージを上がった。ロシアワールドカップ直前のテストマッチ、パラグアイ戦で見せた素晴らしい連係は、10年前の大阪ですでに完成形にあった。

 その後、2011年からはドイツでプレー。ボーフム、フランクフルトで攻撃の中心として活躍する。遊び心に満ちたドリブルテクニックはそのままに、海外のスタイルにもアジャスト。味方をうまく使いながら要所で武器を発揮するなど、力の出しどころを見極めてプレーするようになった。

 そして、27歳になった2015年、さらなる飛躍を求めてドイツを飛び出しスペインへと向かった。新たな活躍の場はエイバル。この小規模クラブで乾は、今度はプレーヤーとして階段を上がることになる。集団、個人両面で戦術が発達しているスペインで守備時のポジショニングや味方と連動した守備の仕方を覚えると、チームでの信頼を獲得。元々、攻撃面ではアクセントになっていたが、新たな要素を肉付けしたことで相手にさらに脅威を与えられるようになった。

 大きな成長を遂げた乾は16/17シーズンの最終節、バルセロナから2得点を奪うという離れ業をやってのけた。翌年はさらに存在感を増すと、その活躍ぶりが認められ来季から古豪ベティスでプレーする。日本人は活躍できないと言われ続けたスペインで、乾はステップアップを果たした。

 日本代表では西野朗監督から絶大な信頼を寄せられている。国内合宿では別メニューでの調整が続いたにもかかわらず、ワールドカップメンバーに選出された。だが、指揮官の期待に応えるように、コンディションが上がった今は欠かすことのできない選手の一人となった。

 こうして乾のキャリアを振り返ると、今回のセネガル戦の活躍は何ら不思議ではない。得点が少ない選手だったのかもしれないが、重要な場面でゴールを決められるのは乾の実力によるもの。クロスバーに直撃したシュートが決まっていればベストだったが、次のポーランド戦に期待したい。

 今や乾は日本代表のエースである。一世を風靡した高校時代、挫折と復活を経験したJリーグでの日々、ドイツとスペインでの進化…。その全てが現在の乾を形成している。駆け抜けたサクセスストーリーにはまだ終わりは見えない。ロシアの地でもまだ何かやってのける気配が漂っている。

【了】

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