侮れない「おっさん連中」の底力
南アのオランダ戦で仕事らしい仕事のできなかった中村俊輔、玉田の両ベテランとは対照的に、本田・岡崎コンビは崖っぷちに瀕したチームに救い、勝ち点1をもたらすことに成功したのは紛れもない事実なのだ。
「圭佑のゴールが出た時の気持ちはもう格別でした。『おっさん連中』が叩かれ続けたんでね。岡崎が前でつぶれて、圭佑に転がって、ベテラン選手が得点してくれたのは、自分のことのように嬉しい」と長友は満面の笑みを浮かべた。
若かりし日に南アで体験した「劣勢でもトーンダウンしたら勝ち目がない」という事実を、彼らはしっかりとピッチ上で表現し、屈強なフィジカルを備えたセネガル相手にも勇敢に挑み続けた。その姿勢を貫けたことこそ、8年間の確固たる成長なのだろう。
値千金の2度目の同点弾、しかも3大会連続のアフリカ勢に対するゴールを叩き出した殊勲の本田も「僕は今回の試合に向けて準備してきた。それは2010年に初めてのワールドカップからずーっとやってきていること。結果だけを見るんじゃなくて、ホントに日本人が想像できひんような努力をしてきて、この場にいるというのをしっかり見てほしい」と改めて語気を強めていた。
彼ら南ア経験者たちには8年がかりで積み上げてきた高度な国際経験値がある。それぞれがクラブやリーグで一歩でも前に進もうともがき続けてきた歴史がある。その価値を再認識させたのが、2度のビハインドを跳ね返したセネガル戦の勇敢な戦いぶりではないだろうか。
西野監督が5月31日に最終登録メンバー23人を選んだ際、若い世代を外して年長者中心の構成にしたことに懐疑的な目線が向けられたが、その批判に彼らは明確な回答を示してくれた。
「おっさんパワー」は決して侮れない。「サッカーは年齢でやるものではない」と長友が再三再四、繰り返していた言葉を我々は今一度、脳裏に刻み込むべきだ。そのうえで、今後の戦いをフラットな目線で見ていくべきなのかもしれない。
(取材・文:元川悦子【エカテリンブルク】)
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